第二一話【ルーター】
今回は特に短いです。
「お頭、その温泉村っつうとこへ行ったらお宝に溢れてんですかい?」
「そうだ、たんまり溜め込んでいるにちげえねえ。なんせ、景気のいい村だって話だからよ。」
「お頭、きれいな娘たちがいるって話も聞いたんだがよ、それは本当ですかい?」
「ああ、爺さん騎士の後妻に収まっている別嬪を始め、けっこういるようだぜ。」
「そいつぁ楽しみだ。」
ぐへへと下品に笑う男たち。
革の鎧を着た彼らは略奪者としてあちこちの村や街の郊外に現れる、けちな強盗どもである。
普段は人の少ない街道などで旅人を襲っては身ぐるみ矧いでしまうような連中だが、今回は大きな山を当てるべく温泉村を目指していた。
六人で一個小隊を作り、それが七個。
その頭の周囲には七人で合計五〇人。
弓兵が三個小隊、と遠距離戦にも対応している。
完璧だ、と頭は自負していた。
雪かきをしながら街道とは違う場所から来たため、村の対応は間に合わないに違いない。
しかも今は夜中だ。
騎士なんて連中も取り囲めばなんとかなるだろう。
矢じりにも短剣にもトリカブトの毒は塗ってある。
頭は勝利を確信していた。
半数ほどは死ぬかもしれないが、それは仕方ないことだ。
結果として勝てばよかろうなのだ。
さて。
先ずは騎士や戦士たちの排除。
それから男どもは皆殺し。
その後は……。
「火付盗賊改方である。神妙に致せい。」
背後から意味のわからぬ内容の子供の声が聞こえ、彼は驚いて振り向く。
パチンと指を鳴らす音を耳にしたのが、頭にとって最期の物音になった。
斥候隊に新しい人員が補充された。
人数は四七名。
ずいぶん増やしたな。
荒くれな感じの者揃いで、恋人の関心がそちらに向かうのではないかと気になったが杞憂に終わった。
我々に対して不服従ということもなく、温泉村の流儀に従うつもりのようだ。
彼らは革の鎧に赤い革帽子と短剣が主装備で、弓を持つ者もいる。
軽装だが、それ故に小回りが効くので攪乱や遠距離戦や後方支援などに使おう。
投石隊を編成するのもいいかもしれない。
休憩時間となり、恋人に誘われた。
手をつなぎながら、森の中へ入る。
このしあわせな日々が続きますようにと祈りながら、がっしりした恋人の手をぎゅっと握りしめた。




