第一七話【ハイウェイマン】
男は最近コルスに雇われるようになった。
三〇がらみでそれなりに鍛えた体である。
昔騎士団に在籍していた気もするのだが、その辺りの記憶は曖昧だ。
男の職業は斥候で、狂王の迷宮を探索していたこともある経験者だ。
流れ流れて寒冷な温泉村までやって来た。
そこに至る経緯の記憶は何故か曖昧だが。
仕事は村北部や薬草園などの警備業務だ。
ここら一帯は比較的治安のよい地域だが、かといって悪い奴が来ないとも限らない。
男のような斥候が状況によって二人から六人の小隊を作り、日々の警備業務に当たっている。
斥候隊は現在一三名だ。
共通装備は以下の通り。
◆数打ちものの重い蛮刀。
◆鉄の板をさりげなく付けた簡素な革兜。
◆端材を樹脂で固めて薄い鉄板を表面に貼り鉄枠を嵌めた木製の楯。
◆所々錆びたまあまあの鎖かたびら。
◆薄っぺらな鉄の板を貼ったそれなりの革の脛当て。
時に熟練の戦士をも一撃でほふる男は、仲間内でも評価が高い。
男は常に親友兼恋人と共に二人組で警備業務を遂行し、不届き者を成敗している。
愛の合体攻撃は隊でも追随を許さない。
隊内で恋人を作るも作らぬも自由ではあるが、程々にしておくようにと雇い主のコルスから言われている。
あまり厳しく取り締まると変に拗らせて酷い状況になりかねぬと思われているのだが、隊内の恋人率は高い。
その経営手腕から幼い子供なのに大したものだと男は思っており、他の隊士と同じくコルスに心服していた。
斥候隊屯所は村外れの薬草園近くにあり、日中は基本的に鍛錬か薬草の世話・採取か近くの森林で余暇を過ごす者が多い。
彼らの仕事は夕方から明け方までが多く、朝方に血糊を落とす光景が日常茶飯事だ。
稀少な薬草を巡る暗闘は始まったばかりである。
コルスは増員を予定しているという。
魅力的な奴が来て恋人を奪われるのは厭だと思うが、兵力の充実は重要だ。
自分は浮気などしないし離れるつもりもないと恋人が言ってくれた時、嬉しさのあまり男は涙した。
斥候隊の面々は村人から依頼された仕事をこなすこともたまさかある。
大抵は簡単な内容だ。
たまにコルスが無茶な内容の依頼という名の命令をするが、一致団結して達成する。
達成した彼らを見たコルスが、にやりと嗤うまでが一連の流れである。
男は恋人と共に釣りをしたり散策したり茸や木の実や果実を採るのが好きだ。
あの城塞都市にいた時よりも生き甲斐を感じる。
この村で恋人と余生を過ごせたらどれだけ幸せだろうか。
そんな夢を見る余裕さえ今はある。
現在の男の胸には浪漫の欠片が刺さっていた。
不意に、恋人が男に微笑みかける。
無精髭も悪くないな、と男は微笑みを返した。




