第一五話【妖精と騎士】
それは昔々のおとぎ話。
昔々のその昔、王国や帝国や公国や共和国などが今よりも沢山ありました。
城のように高い建物が幾つもそびえ立ち、夜も昼のように明るかったそうです。
そして、庶民であろうと今の貴族よりも豊かな生活を送り、飢えることも殆どなかったのです。
空には沢山の船が浮かび、星の世界へ飛び立つ船もありました。
国を守るのは城ほどの高さがある大きなゴーレムで、妖精と騎士が乗り込んで動かしていました。
ゴーレムは工場でいっぱい作られ、槍や剣や斧や楯などで武装し、戦争でいっぱい壊れました。
妖精は人よりも長く生き、賢く、強く、工場でいっぱい生まれて戦争でいっぱい死にました。
ゴーレムを操る騎士はいっぱいいましたが、彼らも戦争でいっぱい死にました。
ある時、妖精たちは反乱を起こしました。
自分たちだけで操れるゴーレムを開発し、戦争ばかりする王族や貴族たちを次々に殺しました。
人間側も負けずにゴーレムを繰り出し、妖精戦争は長引きました。
幾つもの国が滅び、数多くの人が死にました。
妖精たちは森に隠れて住むようになり、彼らはやがてエルフと呼ばれるようになりました。
「というお話があるのです。」
「リーネ、それ、本当の話?」
「さあ、どうでしょうね。昔長老たちから聞いた話なので、神話みたいなものだと思います。」
「エルフの伝承か。」
「何千年も昔らしいですから、本当かどうかは調べようがないですね。」
「ハミルの街の図書館で調べてみるか。」
「ところで、コルス。お腹が空きました。」
「ははは、じゃあプリンを作ろうか。」
「いいですね。」
「マッコイ爺さんが久々に村へ来たから一緒にお茶にしよう。」
「あの方は精力的に飛び回っておられますね。」
「南のアスラン王国産の珈琲や黒糖も爺さんから手に入れたし、今日のお茶会は一味違うぜ。」
同じ人ではないのに。
かつて一緒に暮らした人を思い出し、わたしは内心苦笑いする。
昔々のその昔。
あの時にはもう戻れない。
だから、わたしはコルスと共に生きる。
それが彼らへの供養になると信じて。
それがわたしの生きる道だと信じて。




