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第一四話【オークと女騎士亭】

オレの名はコルス。

寒冷な地域にある温泉村で産業活性化に挑む七歳の少年だ。

中身はこの異世界に転生したおっさんだが、まあ、それは些細なことである。





ハミルの街から一週間ほど北上すると温泉村に辿り着く。


温泉村から一、二日歩いた距離の場所に宿屋はなく、野営向けの広場が街道筋にあるくらいだ。

温泉村は豪雪地帯ではないが、冬場は積雪が普通にある。

真冬の時期は湯治客が逗留するくらいで陸の孤島になる。

でも、それではいけない。

宿場村を建設しよう。

幸いなことに村から一日歩いたくらいの距離に最近ドワーフの集落が出来た。

技術集団が近場にいるのはありがたい。

温泉村を起点として複数の村を設立して機能分担を図り、豊かな生活を目指すのだ。

アラルコン村方面にも宿場村を設立しないとな。





ドワーフの集落の長であるサリエリに手土産として酒樽を持っていき、宿場村の話をした。

彼から快諾を得たオレは、集落近くの街道筋に宿屋兼酒場兼食堂兼土産物屋を建ててもらうことにする。

宿屋の名前は鉄の斧亭とした。

集落を村と変えることにして、その名はメルクリン村とする。

温泉を【力】で探って土地に穴を開け、共同浴場を作らせた。

村の防衛隊は村民の有志から成る戦士隊で行うことに決める。

二五名で結成された部隊をメルクリン戦士隊と名付けてみた。

温泉村の村長とハミルの街の領主に話を通しておかないとな。





メルクリン村から南へ一日歩いたくらいの距離にも、宿屋兼酒場兼食堂兼土産物屋を建設することにした。

ぽつんと一軒だけあるのは物騒な感じがするけれども、それは屈強のオークの戦士と嫁さんの元女騎士が経営することで補うことにした。

旦那の名はタウラス、嫁さんの名はアリエス。

宿屋の名前はオークと女騎士亭。

ベタな名前で捻りがないが、却ってわかりやすいかもしれない。

冬場も人々に来てもらうための努力を惜しんではいけない。

後は街道の整備と安全性の確保だな。

ローマ街道みたいにしたいが、そこまでの知識はない。

石畳もいいが、あれは維持管理が大変なのだ、たしか。

あれほどのものを考えついた古代ローマの人間に感嘆する。

まあ、街道の件は宿題にしよう。

石畳の道は魅力的なんだけどな。

そうだ、井戸を掘っとこう。

適当に掘ったら、たまたま温泉の源泉に当たった。

もう一回掘り、今度は普通の水脈に当たる。

この調子でどんどん開発しよう。





妻と共に暮らして二年になる。

彼女との出会いはかなり酷いものだったが、今では笑い話だ。

部族でも屈指の戦士と自他共に認める私ではあったが、妻が王族の末席に連なる貴族だったことから運命は流転した。

本来ならば認められない婚姻だったが、偉大なる精霊クッコロセのお導きにより私たちは北へ向かった。

温泉村でコルスに出会い、彼がどう交渉したかはわからないが私たちは例外的に認められることになった。

但し、王国に戻らないこと、王族貴族の継承権には一切関わらないことを約束させられた。

それくらい、なんでもない。

妻と一緒にいられることこそ大切なのだから。

そんなある日、コルスから依頼を受ける。

温泉村から二日ほどの距離にある場所で、宿屋の主にならないかと。

商売をやったことがないと言ったら、それでかまわないと言われた。

素泊まり一泊銅貨三〇枚、夕食朝食二食付きで銅貨五〇枚。

周囲にはなにもないので、開墾はコルスが手伝うと言った。

宿屋は近所のメルクリン村から職人が来て建設するという。

春の訪れと共に宿屋を建設予定だ。

宿屋の裏手の畑に馬鈴薯を始めとする野菜を植え、兎や鹿や猪や熊を狩り、野草や山菜や茸を収穫し、山羊を飼い、川で魚を釣る生活。

それも悪くない。

妻も賛成してくれた。

偉大なる精霊クッコロセに感謝しつつ、隣で眠る妻をやさしく抱き締めて私は眠りについた。




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