第一三話【魔王】
彼は村人としてひっそり暮らしたいだけなのです。
「お前様! 村人八九名全員を忠誠心最高状態で一騎当千な戦闘工兵にしたのじゃ! 五歳のひ弱に見える村娘でも、王国騎士を秒殺出来るし軽々と投げ飛ばせるのじゃ!」
「ていっ!」
「はうっ!」
「あのなあ、この変態悪魔。この村でひっそり暮らしていた俺を出会ってすぐにショタにした挙げ句、四三年維持してきた童貞をいきなり奪い、ついでに世話になっている村の人々全員洗脳改造しやがって。とっとと元に戻せ!」
「酷いのじゃ、お前様は。そんなことは出来ぬぞえ。」
「やれ! 今すぐ!」
「無理なのじゃあ!」
「ていっ!」
「はうっ!」
「何人毒牙にかけたら気が済むんだ、この悪魔め!」
「そ、そんなに褒められると照れるの。」
「ていっ!」
「はうっ!」
「なんとかしろ!」
「嗚呼、無茶ぶりをされるとドキドキムラムラするのじゃ。はっ! これこそ恋!」
「単なる脳内電気信号だ。さっさとやらんかい!」
「ちょ、ちょっと待つのじゃ。これだけ強化してしまうと、わらわでもどうにもならないのじゃ。」
「ならないのか。」
「そうなのじゃ。」
「ていっ!」
「はうっ!」
「一ヵ月夜伽の禁止。」
「ひ、酷いのじゃ。今もムラムラしてどうにか理性を保っておるのに。」
「世界を巡って頭を冷やしてこい。」
「わ、わかったのじゃ。」
「世界中を巡ってお前様好みの美少女を集めてきたのじゃ! この一ヵ月の成果を見て欲しいのじゃ! 褒めて、褒めて!」
「ていっ!」
「はうっ!」
「どこをどう間違えたら、俺のハレム構成要員を連れてくるって話になるんだ?」
「はっ! この人数では足りぬのか! しかしお前様好みの娘となると……。」
「ていっ!」
「はうっ!」
「この色惚け悪魔! この子たちを急いで元の場所に戻してこい!」
「無理なのじゃ。お前様好みを追求して改造しまくったので、お前様の嫁にしかなれんのじゃ。」
「ていっ!」
「はうっ!」
「言え! 何故やった!」
「よ、よかれと思って。」
「当たり前のように言うな、エロ悪魔。こんなにちっちゃい子たちばっかり連れてきやがって。」
「可愛いじゃろ。」
「ああ、可愛いよ。一〇歳から一二歳くらいの子ばかりいるのが気になるが。」
「わらわが大人枠じゃ。」
「大人じゃなくて変人枠だな。」
「お前様は酷いのじゃ。」
「酷いのはお前だ、何人の人生を滅茶苦茶にしたら気が済むんだ。」
「じゃがのう、お前様。この村は数年以内に疫病で全滅予定じゃし、この娘たちは厭な嫁ぎ先で若くして死ぬ予定じゃ。お前様の大好きな人助けになるし、お前様の年齢にしては立派ななりなりてなり余れるもので一〇〇発も砲撃すれば皆幸せじゃ。」
「本音は?」
「お前様と今すぐあっはんうっふんしたい!」
「ていっ!」
「はうっ!」
「なんちゅうことを言うんだ、この悪人!」
「巧妙な誘導尋問にやられてしまったのじゃ! 流石はお前様なのじゃ! でも酷い侮辱なのじゃ!」
「そうか。まったくもって人間らしいよ。」
「酷い! 酷いのじゃ!」
「お前様! 戦利品なのじゃ!」
「ていっ!」
「はうっ!」
「どこからさらってきた、この悪人!」
「またそうやってわらわを侮辱……はっ! 新たな快楽に目覚めそうなのじゃ! 流石はお前様!」
「その前向き思考に感心するよ。」
「もーっと褒めていいのよ。」
「褒めてねえ。」
「酷いのじゃ!」
「で、この人たち何者?」
「わらわたちを討伐に来た騎士団や勇者たちの成れの果てじゃ。今はお前様に忠実無比な魔王の軍団兵じゃ!」
「ていっ!」
「はうっ!」
「何故美人や美少女しかいない! 言え! 言うんだ、この極悪人!」
「ひ、酷い侮辱なのじゃ! 他の者たちは瞬殺して肥沃な大地と化したのじゃ。」
「ていっ!」
「はうっ!」
「この子たちが俺のハレム構成要員ってことはないよな?」
「な、な、なんのことじゃ?」
「俺の目を見ろ。」
「もう、また惚れてしまうではないか。」
「ていっ!」
「はうっ!」
「わかった。」
「わかってくれるのじゃな!」
「この子たちを元の場所に戻してくる。」
「だ、駄目なのじゃ! みんな捨て駒として派遣された者ばかりじゃから、拷問や尋問やエロい目にあってなぶり殺しなのじゃ! 薄い癖に妙に高い本みたいに!」
「本当なのか?」
「悪魔の誇りにかけて本当なのじゃ!」
「そうか。」
「そうじゃ。」
「本音は?」
「お前様が浮気をしても安心出来るように囲い込みをしておるのじゃ。」
「お前は当分動くな!」
「酷いのじゃ!」
「お前様! 転生者を一〇人抹殺してきたのじゃ!」
「ていっ!」
「はうっ!」
「お前は今なにを言った? なにをした? 吐け! 今すぐ吐け!」
「お、お前様、そんなに激しく頭を揺すられると吐きたくなるのじゃ。」
「よし、吐け。……ちょっと待て。そっちじゃない。」
「……ま、まだ、気持ち悪い。ふらふらするのじゃ。勇者程度ではどうにもならぬわらわを翻弄するとは、流石は我らを統べる魔王様なのじゃ。」
「やかましいわ、この悪魔め。」
「お褒めにあずかり、愉悦なのじゃ。」
「ていっ!」
「はうっ!」
「褒めてねえ。状況説明。」
「異世界の神々の尖兵を討ち果たした。それだけじゃ。」
「本音は?」
「あいつらは気分が悪くなるようなことを平気で言ったりやったりするのじゃ。身勝手じゃし、当たり前のようにこの世の理を乱すのじゃ。左様な者を生かしておいてはならぬ! チートがどうとかハレムがどうとかユニークスキルがどうとか訳のわからぬことを散々申しておったが、一発消去じゃ。どうやっても殺せなかった者は別の世界や無限回廊や次元断層に落としたから、この世界にはもう這い上がれまいて。」
「……。」
「無言は辛いのじゃ。」
「意外と真面目なんだな。」
「惚れたかの?」
「それは別だ。」
「酷いのじゃ!」
「何人生きている?」
「五人じゃな。温泉村の少年にアスラン王国の傭兵にサタケ辺境伯に日本人一名とアメリカ人一名じゃ。」
「監視は?」
「無論、全員に付けておる。」
「基本的に手出し無用。なにかする時は必ず事前報告。しなかったら夜伽は一ヵ月禁止。そんなとこかな。」
「今、さらっと酷い条件があったのじゃ!」
「気のせいだ。そうそう、村を要塞化したり城を建てたりしたら、夜伽を半年禁止にするからな。」
「せ、先手を取られたのじゃ。致し方ない、貴族の首でも……。」
「ていっ!」
「はうっ!」
「庶民だろうと貴族だろうと殺す時は事前に一報しろ!」
「わかったのじゃ! わかったから、のう、今夜は……。」
「反省文を本一冊分書き終えるまでなし。」
「ひ、酷いのじゃ!」




