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第一二話【赤ちゃん】

「みゃあ、みゃあ。」


オレの足元には翼竜の赤ん坊がいる。


「帝都の王族にでも売れば一生遊んで暮らせますね。」


淡々と闇エルフのリーネが言った。


「コルスは翼竜のマントを羽織っていますから、お父さんと思っているのでしょう。……となると、わたしはお母さんですね。初めての子が翼竜とはびっくりです。」

「突っ込みどころが多すぎて、なにも言えないよ。」





時間は半日前に遡る。


翼竜を目撃したというアラルコン村の戦士隊を率いて討伐に来たオレたちは、翼竜に手も足も出ない面々を差し置いて指パッチン一発でその首を落としたのだった。

素早く血抜きして解体する。

中空に空間固定された翼竜の体が部分毎に分割され、血は水分を飛ばして粉状にした。

翼竜は余すところがないからありがたい。

今日は焼き肉だな。

血も皮も爪も高く売れる。

クロフツ爺さんに頑張って革製品を作ってもらおう。

ちなみに雌だった。

「子供がいるんじゃないか?」

戦士隊隊長からそう言われ、【力】で空間検索する。

竜の巣は峻険な山の中腹にあったが、空間移動させればいい。

そして、無事に卵を回収した。でかいな。

翼竜の卵は殼だけでも高価に取引される。

金貨二枚は確実だから、数奇者に売ろう。

さてさて、この卵の中身はどうしようか?

そう思っている内に、卵が孵った。

えっ?

なにそのご都合展開?

小さな竜はつぶらな瞳でオレを見つめて「みゃあ!」と鳴いた。

あ、これあかん。





翼竜はオレを親と認識したらしく、とことこついてくる。

たまにとてんと転ぶ。

羽をばさばさ振るが、浮かびもしない。

まだまだ当分空は飛べないようだ。

……と、冷静なふりをしたが。

「ど、ど、ど、どうしよう? 餌はどうすればいいのかな? 予防接種はどうすればいいのかな? 届け出はどうしよう? 首輪もした方がいいかな? あっ、名前を付けないと!」

「落ち着いてください、コルス。あなたらしくない。餌は山羊の乳でも与えてみたら如何ですか? 村長や冒険者ギルドに報告はした方がいいでしょうね。予防接種とはなにかわかりませんが、首輪は止めておいた方がいいでしょう。成長の早さがわかりませんし、金属製の首飾りの方がよいのではないですか? 名前はお好きなように。」

「よし、そうしよう。さすがはリーネ。……よし、お前の名前はミューだ。」

「みゃあ!」

「おっ、気に入ったか?」

「みゃあ! みゃあ!」

「よしよし、そうかそうか。」





翼竜を飼っている者など、聞いたことがない。

成体を見て生き残った者すら少ないのだから。

最初は警戒していたアラルコン村の面々も、翼竜の幼体が人懐っこいので安心したようだ。

村の女衆が、次々に抱っこしている。

闇エルフも翼竜も共生している村か。

異質だが、それは幸せな風景だろう。

おそらく、温泉村も同じ光景になる。

そう、予感した。


翼竜がわたしの害にならない限り、コルスの意見に従おう。

「みゃあ!」

翼竜がわたしの足元に来た。

抱っこすると、翼竜は無垢でつぶらな瞳でわたしを見つめる。

まっ、いっか。

コルスにだいぶん毒されてきたと思いつつ、普段と違っておろおろしている少年の元へ歩いた。





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