仁科君は新たな世界へと飛び立つ
きっと、これを読んだら後悔するだろうね。何故かって? これが駄作だからさ!
石橋を叩いて渡る性格の人はブラウザバックしましょう。
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共生社会なんてどこにもない、あるのは流行や空気に支配される強制社会のみだ。
つまらない授業の時間にそんなことを考えながら窓の外をぼんやりと眺めながめていると、一匹の燕が僕の視界を真っ二つに裁った。
空を縫って飛び回るあの鳥のように自由が欲しい。そんな詩人のような言葉をふと思い付く。
でも、その言葉は僕に相応しくない。日々をただ惰性で生きる僕に自由なんて猫に小判だから。
広々とした荒野を彷徨うよりは、レールの上を惰性で進んでいく方が楽で安全だ、脱線をしなければという条件は付くけれど。
だから僕はレールを進むことを選び脱線をしないようにする。
他人に嫌われないために、心にも思っていない言葉をこの世界へ吐き出す。自分をだましだまし動かして生きる。
クラスの中で輝いている木崎 煌太君や因幡 美魅さんとは違い、仁科 涼つまり僕には特技もカリスマ性も何もない。だから僕は彼らの作ったレールの上をひたすらに辿っていく。
このスタンスは何時までも続くだろう、大学に流されるまま入っても何となく社会人デビューをしたとしても。
でも、レールから外れてしまったらどうなるのだろうか?
「お……ニ……」
それに、レール自体が途切れてしまうことが有るのではないだろうか?
「お……い、ニ……シー」
その時、僕はどうしたら良いのだろうか?
「おーい、ニッシー聞こえてる?」
「ふぇ? ああ、すみません因幡さん内容を聞いていませんでした」
まずい、いつの間にか授業が終わってたみたいだ、うわぁ話を聞いてなかったどうしよう、嫌われたらまずいよどうしよう、あぁ変な詩人みたいなこと考えてんじゃなかったどうしよう、レール云々考えといてもろに脱線一直線じゃんどうしよう、因幡さんなんかあきれた顔をしているどうしよう、どうしよう、どうしよう、わぁー!
「えーと、まだ呼び掛けただけで何にも言ってないんだけど、ニッシーってやっぱり天然だよね」
「すみません」
うわー! 不覚を取った! 話聞いていなくて嫌われるとか思ったけど話してすらいなかったなんて……小学校の頃先生をお母さんって呼んでしまったときと同じぐらいのミスじゃないか!
「天然だって言われて謝るところが、ずれているんじゃないかと私は思うんだ。ザッキーはどう思う?」
「何で俺に振るんだよ。まあ俺もそう思うけどな。でも、これがクラス委員なんだよな」
「これ呼ばわりしちゃ駄目だよザッキー。確かにニッシーはニッシーだけどね」
まさか木崎君までいたなんて。え、何でそんな海より深いため息ついてるの? もしかして、僕って嫌われてる!? そんなぁ、がんばって嫌われないようにしていると思っていたのに。あと、ニッシーがニッシーってどういうことなんだろう? 僕は僕以外の何者でもないというのに。でも、木崎君は分かってるみたいだしここで聞いたら空気が読めない奴だと液体窒素より冷たい目で見られるんじゃないだろうか? こうなったら話を反らすしかない!
「ところで、因幡さん僕に何か用があったのではないですか?」
「いや、特にないよ」
え、なかったの。そんなバカな、僕がこんなピンチに陥っているのは、因幡さんのちょっとした気まぐれのせいだとでもいうのか! 神よ、何故私にこのような試練を与えたのですか! 呪ってやるーー‼
「では、何故話しかけてきたのですか?」
「だってニッシーが授業終わっても席に座って窓の外をぼーっと見てたから気になって」
神じゃなかったーー! まさか、因果応報、自業自得、身から出た錆だったなんて。つまり、冤罪で神に呪いを掛けようとした僕は神からも見放されるということか。ふっ、つまり僕は天涯孤独になったということか。しょうがない、脱線してしまったのなら荒野を逝くか。
「アディオス、今までの僕。そして、これからは俺の時代だーーー‼」
「おい、美魅。なんか、いつものように涼がぶっ壊れたぞ」
「ニッシー大丈夫?」
「すいません、すいません、調子乗ってすいません、因幡さん、木崎君、近くにいてすいません、同じ空気を吸っていてすいません、生きててすいません、この世界に存在しててすいません」
無理だ。僕には無理だったんだ。僕はどこまでいっても電車のごとき存在でしかなく、荒野を一人走るのは、生身の人間が宇宙空間で生きる位の無茶だったんだ。
あぁ、これが真理か。
そうか、僕は真理にたどり着いたのか。
なら、もう満足かなぁ。
みんな今までありがとう。さようなら……。
「ニッシー、なんで謝るのよ。貴方のせいじゃ無いのに」
「美魅、謝っている内容についてはは否定しないんだな」
「あっ、間違えた。それじゃあテイク2いっきまーす!ニッシー、お前はこの世に存在してていいんだ。だからお前のことはオレが守る!」
えっ、僕は嫌われてなかったの? まだ、生きてていいの?
「ほんとう? ほんとうに、生きてていいの?」
「ああ、もちろんだ」
「こんな僕でも?」
「当たり前だろ」
「どうして」
こんななんの取り柄も無い僕に。
「どうして」
こんなにも。
「どうしてそんなことが言えるの?」
優しい言葉をかけてくれるのだろう?
「友達だからに決まってんだろ」
「とも、だち」
「そうだ、友達だ」
「ともだち、うん、友達!」
「ああ」
「そっか、友達だからか。ありがとう因幡さん! 元気が出てきたよ」
友達、そうか、そうなんだ、たったそれだけのことなんだ。 たった、それだけで、こんなにも、世界は変わるんだ!
「あのさ、因幡さん」
「なんだい、ニッシー」
「これからも友達でいてくれる?」
「もちろんさ」
そう言って因幡さんは僕と握手をした。僕は、今日の事を忘れないだろう、一年たっても、十年たっても、いつまでも、いつまでも。
「いや、いや、いや、二人してなにやってんだよ! どこの青春ドラマだよ! しかも、普通男女反対だろ!」
「あー、いけないんだザッキー。その言葉は男女差別をしていると見なされちゃうぞ。でも、別に私が男っぽくてもいいんじゃない?」
「はっ?何でだ?」
「だって、ニッシーって確かに男の子だけどなんか可愛らしくて、女の子みたいじゃん」
お、女の子、そんな、そんなこと思われてたなんて、うぅ、すごくかなし……くない?ふぇ、何故だろう?因幡さんにそういわれるとなんかドキドキして胸が苦しい。
「おい、仁科。因幡からこんなこと言われてるけど大丈夫なのか?」
「えっと、その、嫌じゃないかも」
「はっ?」
「えっ?」
「う、うわーーーー! 今のは取り消しです。べ、別に因幡さんから言われて少し嬉しいとか、ちょっとドキドキしたりとか、そんなのは断じてない、ないったらない、絶対無いーーーー!」
「そうか、そうか、なるほど仁科、因幡に惚れたのか」
うわわわ、どうしよう墓穴を掘ってしまった。まずい、本当だとわかったら、因幡さんは絶対僕のこと嫌うに決まってる。どうしよう。あっ、そうかこう言ったらいいんだ。そうしたら因幡さんに嫌われなくてすむ!
「ち、違うし。べ、別に因幡さんに惚れてなんかないんだからな!」
ここまで読んでくださった貴方に感謝感激です!
冒頭の文では少し、いや、かなりふざけてしまいましたが、感想もお恵みいただけると嬉しいです。