勘違い
アンドレアスは、村長宅へと来ていた。
ドアをノックし、
「スイマセーン!」
と大きな声で言ったが、返事はない。
「あれ、いないのか?スイマセーン!」
返事はない。
少し強くドアを叩き、もう一度呼ぶ。
「スイマセーン!!」
すると、女性の声が聞こえた。
「はい、ちょっと待ってください!」
疲れきった男は、ふぅ、とため息をついた。
少し時間が経ち、ドアが少しだけ開いた。その隙間から、少女が片目だけでこちらを覗いている。
「あのー、ど、どなたでしょうか?」
「えーっと、一応、『勇者』をやらせてもらってるアンドレアスという者なんですが.....村長にちょっとお話しが...」
バタン!
玄関に一瞬の静寂が訪れる。
「え?ちょ、ちょっと!なんで?開けてください!開けて!ドア開けて!」
アンドレアスはドンドンとドアを叩いた。
ドアの後ろで、村長の娘は震えていた。
(どうしよ〜!ついにこの村にも変な人が来ちゃったよ〜!)
精一杯の声を出して、抵抗を試みる。
「か、帰ってください!怪しい者は家に入れないように言われています!」
男も必死に反論する。
「いや!怪しい者じゃないから!信じられないと思うけど勇者なんだよ!ほんとに!頼むよ!後生だから!開けてくれないと住むとこないんだよ!野宿はもう勘弁したい!開けてください!開けてください!開けてくれよぉ〜!」
アンドレアスの悲痛な叫びは、静かな村に響きわたった。
〜4時間後〜
ザナバ村の村長宅、応接室。
そこにはコッペル村長の娘と、怪しげな男がいた。
突然平和な村に現れた、勇者を名乗る浮浪者のような格好の男。
村長の娘ーーーティラは出来れば家に入れたくは無かったが、
「...分かった。分かったよ...。もう勇者じゃなくていいから。俺、ただの旅人だから。だからお願い...。家に入れてください!村長とお話しさせてください!お願いします!」
と言う、男のあまりの必死さに折れて、家にあげてしまったのであった。
「いや〜、助かった。家に入れてもらえなければどうしようもないからな」
そう言うと、男はズカズカと入り込み、
「長旅の疲れがとれる〜」
と言って、応接室の柔らかな椅子に腰掛けてしまった。
そんな男を不快に思いながら、
「も、もうすぐお父さ、いえ、村長が参りますので、少々お待ちくださいっ」
そう言ってお辞儀をすると、ティラはさっさと応接室を出た。
「おとーさーん!お客さーん!」
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