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少女とユカイな仲間達〜Xmas編〜

作者:

12月25日。

某都内私立高校2-6の教室。

「フィーフイッシュアメリクリスマス、フィーフイッシュアメリクリスマス、フィーフイッシュアメリクリスマス、アハッピイニューヤー」

正しいのかよくわからない、クリスマス定番の歌を歌うのは、2-6の生徒である有村 友梨。彼女の自慢である天然パーマは、今日はポニーテールにしていた。といっても、髪を縛らなくとも肩くらいまでなので、縛っている量はそらほど多くない。そのせいか若干ボサボ…乱れているのは気のせいではないだろう。

「友梨、それおかしくね?」

そう問いかけるのは、眼鏡をかけた真面目そうな雰囲気のポニーテール少女。彼女の名は仲崎 愛梨。隣のクラスの2-5の風紀委員をしており、2年ながら風紀委員長を務めている。

「確かに友梨ちゃん変だね。なんでwishなのにfishなの?それじゃ魚になっちゃうよ」

「「なんだ…と⁈」」

茶髪の二つ縛りの少女__杉本 唯は笑いながら友梨に話かける。放送部の副部長をしている唯は、物事をハッキリ言う性格で、どんなこともハッキリ言う傾向がある。それが吉と出るか凶と出るかはその場の状況次第だ。

言われてみれぱ確かに、wishとfishは意味がかなり違う。クリスマスで願いを叶えもらうのに、何故魚がでてくるのだ、二人よ。

それに気付いたのは友梨だけでなく玲と同じくらいの短髪少女、中真琴だった。どうやら今の今までwishとfishを間違えて歌っていたらしい。二人の表情はこの世の終わりのといっていいほど絶望に満ちた表情をしている。

「ゆーちゃんもマコさんもちょっとちがうよ。正しくはこう。

We wish you a Merry Christmas,

We wish you a Merry Christmas,

We wish you a Merry Christmas,

And a Happy New Year.」

「うわ!桃ちゃんめっちゃ発音ええ!」

真琴がテンションが上がった風に叫ぶと、桃ちゃんこと朝田 桃華は笑顔で答える。

「これでも英語はClassでTopだから!」

「桃ちゃん、それはどこぞの芸人だから。そこまでカッコよくないから」

愛梨は苦笑気味の表情で桃華を見る。無論、我が道を行くタイプの桃華は耳に入っていない。これもいつもの光景だ。

「ねーねー、三学期にあるスポーツ大会なんだけどさ、みんな何出るの?」

真琴の問いかけに皆は「来年だっけ?」「あー、あれね」などと口々に呟く。

年の開けた二月にあるスポーツ大会。サッカー、ソフトボール、バスケット、ドッチボール…など様々な競技がある。彼女達の通う高校は何事も全力がモットーなので、特に盛り上がる学校行事には力を入れている。

「あたしと唯ちゃんはまだ決まってないよ。まぁ、あたしはバスケだけどね」

「愛梨様はバスケ好きだしー」

「おーい、唯さん。あたし、いつもそのあだ名で呼ばないでって言ってるよね?」

「え?なんのことー」

愛梨は極上の笑みを浮かべて唯を追い回す。唯は捕まるとどうなるかわかっているので、勿論逃げ回る。

「ちゃーす」

「遅れてゴメンね、みんな」

愛梨と唯の追いかけっこを止めたのは、突然教室に入ってきた二人組だった。

言葉遣いが若干荒い方の少女は眼つきが少々(いや、かなり)悪く、身長は恐らく平均女子に辿り着いていないだろう。

反対にもう一人の少女は、とても物腰が柔らかげで平均女子の身長を優に越えている。

身長の低く眼つきの悪い方が嶋田 玲。優しげでお嬢様のような雰囲気を醸し出しているのが、乾 いのり。

一見、正反対で接点のなさそうな二人だが、意外なことに幼馴染なのだ。それで、部活も一緒でとても仲が良い…と言いたいところだが。

「玲、きちんと挨拶しないとダメです。親しい仲にも礼儀あり、です」

「いのりは堅いんだよ、頭が」

「なら玲は頭の堅い私よりか勉強ができないということですね」

「んだと、コラぁ」

と、悪口さながらなのことをお互いを目の前にして言うのだから、仲が良いのか悪いのかよくわからない。

「いのりさーん、玲ちゃーん。フィーフイッシュアメリークリスマス!」

「「友梨サン(ちゃん)fishじゃなくね(ないですよ)?」」

「うわーん、玲ちゃんもいのりさんもいじめるー」

…息はピッタリなのだろう。

「玲サン、乾ちゃん。部活お疲れ様」

愛梨が労うと、玲は深い溜め息を吐いた。

「まったく…。どいつもこいつもクリスマスで浮かれてまともに練習もできなかったよ」

「今日はいつもより多めに怒鳴っていたもんね」

玲といのりのコンビは合唱部に所属しており、玲は部長いのりは副部長を勤めている。部活の時の二人の姿は普段とは別物で、息がピッタリだ。やはり、仲がいいのか悪いのかよくわからない。

「何がクリスマスだよ。キリスト生誕祭どころかリア充が楽しむ祭りじゃないか」

「とかいいながら、嶋さん私達とのクリスマス会楽しみだったんじゃないのー?」

「有村ぁぁぁぁぁぁぁ!!」

どうやら図星だったようだ。玲は顔を真っ赤にして友梨に詰め寄る。友梨はヘラヘラと笑いながら玲を相手にする。

「2-1は?」

「何がですか?」

真琴はいのりにスポーツ大会の話を降る。事情を聞いたいのりは、そんなこと今の今まで忘れていた、という風に「ああ、そんなものがありましたね」と答えた。

「私は運動不足なのでその日はサボ…ゴホゴホ熱が出る予定ですよ」

「そういうの嬉しそうに笑顔で言うなよ…」

いつのまにか友梨を黙らせたのか、話に参加した玲はげんなりしていた。それは、友梨に対してなのかいのりに対してなのか、はたまた両人に対してなのかもしれない。

「桃さんは?何出るの?」

「あたしもいーさんと同じかな。あいさんとか、まっちゃんみたいに運動神経良くないし。骨折でもしよっかなー」

「それじゃあダメよ、桃ちゃん。骨折だと痛いじゃない」

「はっ!ならば、インフルエンザなどならいける?」

「インフルエンザを使う時は私に言ってね。知り合いに医者がいるから。偽造なんて簡単よ」

と、恐ろしい会話をしている。

桃華といのりの会話に呆れてなにも言えなくなった玲は無言で席についた。

「私はバスケットだよ。真琴と有村はソフトボールだっけ?」

「そうそう。おんなじクラスなのに覚えてないの?」

「…種目決めの時は寝てた」

真琴の問いに答えた玲の言葉の内容は、なんとも無責任のように聞こえるが、玲はやる時はやる子だ。やらない時はやらないが。

「まぁまぁ!スポーツ大会なんてお菓子食べながらでもいいでしょう?早く始めようよ!」

友梨の言葉に一行はクリスマス会の準備をし始めた。

玲はふと思う。

(これだけ濃いメンツが、よくもまぁ仲良くなれたな…)

ここにいる七人は、出会う前から自分が若干の常識から外れているのを知っていた。

『群れるだけなら一人でいい』

そう言っていたのは、一体誰だっただろうか。

高校に入学して出会った、自分とある意味似ているメンツ。それは、何処か惹かれあうものがあったのだろう。

性格上、まともな高校生活を送れるとは思いもしなかったが、今では普通の高校生活を送れている。

今の仲間には感謝しかない。


「この出会いに感謝を込めて」


今なら本音を言えるかもしれない、と思いながら呟いたが何とも臭いセリフになってしまった。やっぱり気恥ずかしいから、後の本音は心の中で言っていよう。








Merry Christmas、My best friends‼︎

So that there is happiness‼︎

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