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私は何も言えずに涙を流した。
嗚咽すら漏れることなく、涙だけが流れる。
「……すまない。こんなタイミングで」
「いいえ…、何となく解ってました」
目立つから、と場所を変えた。
人目につかないベンチで、赤石さんの隣に座る。
「赤石さんが誰にでも優しいのも、私が好みの女性じゃないのもっ……なんとなく、解ってっ…」
ようやく漏れだした嗚咽。
「……おれも、知ってた。ユキのその気持ちが、真っ直ぐにおれに向かってるのも」
「ック…ぅ、」
「長い間、辛い思いをさせてすまなかった」
「そんなっ、こと…!」
私は、赤石さんを想って幸せだった。
謝るくらいなら、私の気持ちに応えて。
そんな風に言えない自分に、涙が止まらなくなった。
「ユキ」
慰めるように抱きしめてくれる赤石さんの体温が悲しい。
「ありがとう」
「っぅ、…うぁあああん!!」
(二度と歌えぬラブソング)
一度だけ、傷ついても良いからと望んだ。