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「ユキ」
「ん?」
「あんたさ、可愛くなったわよね」
「……どうしたの、いきなり」
昼休み、授業は被らないのにわざわざやって来た海が言う。
私は温めてきたお弁当を片手に立ち止まる。
「思っただけよ。何かあった?」
「なにも無いよ。海はまだ授業?」
「ふーん、そうやって話し逸らすの?」
「えー…」
お弁当冷めるんだけど。
文句を言わせてくれないのが海だ。
「あ、赤石さん!」
「っ……」
「おう、どうした?」
「赤石さんも、ユキのこの前の見に来てたんですよね?」
「あぁ。凄かったな」
「ですよねぇ」
知ってる。
この人は優しいだけ。
気にしちゃいけないのは解ってるのに、心臓が跳ねる。
「じゃ、またな」
「はーい」
手を振る海の隣で、小さく頭を下げた。
赤石さんを見送って、海のため息を聞く。
「本っ当に……どこまで一方通行なのよ」
「……うん…」
「………お昼、食べましょ。ナオたちもいるわよ」
「荷物、持って来る」
(届けられないラブソング)
会えない方が楽なのに。