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私は突然熱をだした。
海からはナオたちが着いてきて騒がしくなるからお見舞いは行けないと電話が来た。
ナオから話を聞いたらしい赤石さんからも、様子はどうだとメールが来た。
なんだかんだで、私にもまだ心配してくれる人がたくさんいるらしい。
こんな卑屈になるのも風邪のせいだと思う。
一人暮らしを始めてからというもの、医者は遠くて行けないし風邪にだけは気をつけていたというのに。
さて、どうしたことだろう。
あんなにしょっちゅうメールしてくるハジメさんからの連絡がない所を見ると、誰もハジメさんには言ってないらしい。
まぁ風邪くらい言う程でもない。
私も、言うつもりはない。
寝てれば治るし、簡単な食事くらい取る余裕はある。
二日も様子を見ればバイトにも行ける。
そう思って布団に潜るった途端、ドアチャイムが鳴った。
ピンポーン…
しばらく無視をすれば何度か連続してチャイムが鳴ったがすぐに止まる。
さて寝ようか、と目を閉じたと同時に携帯が鳴り出した。
「………はい…」
『あ、悪ぃ…、寝てたか?』
「ぇ、いや……、平気ですが」
『あの、さ……ユキ、風邪引いたって聞いて今、家の前に来ちまったんだけど』
「………待ってて下さい」
そうきたか、という言葉を飲み込みボサボサだった髪を結わえる。
とりあえず水で顔を洗ってから玄関に向かった。
「…どうも。あの、風邪移ると困るんであまり歓迎は出来ませんが」
「いや、急に来たおれが悪いし」
「いいえ、こちらこそ。ご心配おかけしてすみません」
(耳を掠めたラブソング)
聞かないフリの限界はいつでしょうか。




