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出会いにそう驚きは無かった。
同級生が「おれの兄貴だっ!!」と紹介してきた時の印象は、似てるなぁ、って。
それだけ。
残念なことに私はある程度顔の良い男は見慣れてた。
まぁそれでも、友人付き合いくらいに話しはするし別に嫌な人じゃない。
『えーと、あたしもともとボーカルじゃなかったんだけどね。ていうか、さっきまで違ったよね』
冗談混じりに同じステージ上のメンバーに言えば、客席からも小さな笑いが起きた。
『じゃ、最後の曲ー』
愛されて生きてきた私は愛してくれない人がキライ。
長い片思いの相手は優しいけど、それだけ。
それだけの癖に、引きずってしまう。
そのせいで、あの壁際にもたれて笑顔でこっちを見る友人のお兄さんのアピールを見て見ぬフリして傷つける。
歌う私の視界には別の人。
まっすぐになんて見れないけど、心だけはまっすぐに向ける。
(必死で歌うラブソング)
そんな私を見て傷つく人を知ってるのに。