悪徳への処罰、黄昏の弔い
「おのれ、おのれえええ!」
ザルツは逆上し、髑髏の杖から黒い炎を放った。周囲を焼き尽くす死の劫火。だが、終は避けることさえせず、静かに歩み寄る。
炎は彼の聖域に触れた瞬間、清らかな温風へと変わった。
「ば、化け物め……! 貴様、何者だ!」
「葬儀屋です。……それも、一〇二年の間、誰よりも死と向き合ってきた男ですよ」
終はザルツの眼前に立ち、大鎌の石突きで地面を力強く叩いた。
衝撃波がザルツの防御魔法を粉砕し、彼を地面に叩き伏せる。
「あなたの命を、今ここで摘み取ることは容易いです。しかし、それは葬儀屋のやり方ではない」
終は倒れたザルツを見下ろし、冷徹に告げた。
「その代わりに、あなたには『自らの罪の重さ』を背負って生きてもらいます。……今日からあなたの耳には、あなたが道具として扱った魂たちの『最期の願い』が、永遠に響き続けるでしょう」
「ひっ、あああ! 何だ、この声は……! やめろ、聞こえるなあああ!」
ザルツは耳を抑え、狂ったように叫びながら森の奥へと逃げ去っていった。それは死よりも過酷な、魂への報いだった。
嵐が去った後の墓地。
終は大鎌を杖の姿に戻し、荒らされた墓を一つずつ元通りに直していった。
折れた墓石を繋ぎ合わせ、供物の顕現で清らかな水を撒く。
「……お騒がせしました。もう、静かに眠ってください」
空には美しい夕焼けが広がっていた。
亜神となって手に入れた強大な力。しかし、終はそれを誇ることも、溺れることもない。
彼はただ、丁寧に墓標を拭き、帽子を深く被り直した。
「さて。……あのような魔導師が跋扈しているとなると、この国の葬送文化も、少し立て直す必要がありそうですね」
鞄の中に入っている、かつての現世で愛用していた小さな数珠が、微かに揺れた。
一〇二年の心を宿した二十歳の葬儀屋は、乱れた命の秩序を正すべく、再び長い旅路へと踏み出した。
次の街では、温かい紅茶を一杯いただけると良いのですが。
終は独りごち、橙色に染まる街道を悠然と進んでいった。




