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百二歳で大往生した葬儀屋、異世界で亜神として二度目の人生を始める〜最強葬儀屋、銀の杖で世界を安らぎの葬送に染め上げる〜  作者: 榎木丈


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死を弄ぶ者

「くははは! 見つけたぞ、妙な術を使うという葬儀屋め!」


 高く、不快な笑い声が響き渡った。

 木々の上から、漆黒の法衣ほういを纏った男が舞い降りる。隣国の宮廷魔導師の一人、反魂はんごんのザルツ。彼は手にした髑髏どくろの杖を振り、終を指し示した。


「貴様だな、我が疫病の計画を邪魔したのは。おかげで死体が足りぬ。代わりに貴様の身体を、最高の素材パーツとして提供してもらうぞ!」


 ザルツが呪文を唱えると、墓地から掘り出されたであろう無数の遺体が、泥の中から這い出してきた。彼らは苦悶の声を上げ、意志を持たぬ操り人形として終へ襲いかかる。


「素材、ですか……」


 終は静かに溜息をついた。

 その二十歳の若々しい瞳に、氷のような冷徹さが宿る。


「ザルツ殿、一つお尋ねします。……あなたは、自らの人生の最後の一行を、泥に塗れた汚文字で汚したいのですか?」


「何をほざく! 死ねい!」


 終は銀の杖を横に一閃させた。

固有能力スキル魂の引導(サイコポンプ)――断罪の形態ジャッジメント・モード


 杖がまばゆい光を放ち、その形状を歪ませる。

 現れたのは、美しくも禍々しい銀色の大鎌。刃の部分には、魂の平安を祈る聖句せいくが微細な文字で刻まれている。


聖域展開サンクチュアリ・オープン安らぎの葬送(レスト・イン・ピース)


 終を中心に展開された黄金の領域に触れた瞬間、襲いかかるゾンビたちの動きが止まった。

 彼らを縛っていた穢れた魔力が、聖域の浄化作用によって霧散していく。


「な、何だと!? 我が秘術が通用せぬだと!?」


「彼らは道具ではありません。愛され、慈しまれ、そして眠りにつくべき魂です。……それを汚す権利は、神にさえありません」


 終の身体が、音もなく動いた。

 亜神の身体能力を解放したその動きは、もはや人の目では追えない。

 銀の刃が、空中を舞うように円を描く。


 それは肉体を断つ刃ではない。魂を繋ぎ止めている呪縛じゅばくの糸だけを断ち切る、慈悲の刃だった。


永眠やすみなさい。……後のことは、私が引き受けます」


 鎌の一振りが空を切るたび、生ける屍たちは安らかな表情を取り戻し、光の粒となって大地へと還っていく。

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