死を弄ぶ者
「くははは! 見つけたぞ、妙な術を使うという葬儀屋め!」
高く、不快な笑い声が響き渡った。
木々の上から、漆黒の法衣を纏った男が舞い降りる。隣国の宮廷魔導師の一人、反魂のザルツ。彼は手にした髑髏の杖を振り、終を指し示した。
「貴様だな、我が疫病の計画を邪魔したのは。おかげで死体が足りぬ。代わりに貴様の身体を、最高の素材として提供してもらうぞ!」
ザルツが呪文を唱えると、墓地から掘り出されたであろう無数の遺体が、泥の中から這い出してきた。彼らは苦悶の声を上げ、意志を持たぬ操り人形として終へ襲いかかる。
「素材、ですか……」
終は静かに溜息をついた。
その二十歳の若々しい瞳に、氷のような冷徹さが宿る。
「ザルツ殿、一つお尋ねします。……あなたは、自らの人生の最後の一行を、泥に塗れた汚文字で汚したいのですか?」
「何をほざく! 死ねい!」
終は銀の杖を横に一閃させた。
「固有能力:魂の引導――断罪の形態」
杖がまばゆい光を放ち、その形状を歪ませる。
現れたのは、美しくも禍々しい銀色の大鎌。刃の部分には、魂の平安を祈る聖句が微細な文字で刻まれている。
「聖域展開:安らぎの葬送」
終を中心に展開された黄金の領域に触れた瞬間、襲いかかるゾンビたちの動きが止まった。
彼らを縛っていた穢れた魔力が、聖域の浄化作用によって霧散していく。
「な、何だと!? 我が秘術が通用せぬだと!?」
「彼らは道具ではありません。愛され、慈しまれ、そして眠りにつくべき魂です。……それを汚す権利は、神にさえありません」
終の身体が、音もなく動いた。
亜神の身体能力を解放したその動きは、もはや人の目では追えない。
銀の刃が、空中を舞うように円を描く。
それは肉体を断つ刃ではない。魂を繋ぎ止めている呪縛の糸だけを断ち切る、慈悲の刃だった。
「永眠なさい。……後のことは、私が引き受けます」
鎌の一振りが空を切るたび、生ける屍たちは安らかな表情を取り戻し、光の粒となって大地へと還っていく。




