エピローグ
最終話です。
こうして私はあの日から一週間後、殿様のお嫁さんとなった。旦那様となった殿様は私にとても良くしてくれた。
綺麗な着物や簪、豪華なご飯。だけど嬉しくなかった。清十郎のあの言葉を聞いたあの日から私の心の中はぽっかり穴が空いて、何も感じなくなっていた。
数年経ったある日、清十郎の父親から手紙と日記が届いた。そこには清十郎が流行り病で病死したことと倅である、清十郎の日記を私に持っていて欲しいことが書いてあった。
私は渋々日記を開いた。
『今日、前から気になってた女の子が俺の家に来てくれた!千代というらしい!目だけじゃなくて名前も綺麗だ!』
『今日は千代と川に遊びに行った!水が冷たいと言って笑ってる千代はとても可愛くてそれで綺麗だった。千代が滑って転びかけた時咄嗟に抱き締めたらなんかいい匂いがしたから恥ずかしくて急いで石の上に座らせた。花冠を作って、千代に被せたらお姫様みたいですげぇ綺麗だった。大人になったらいつか簪と櫛を贈りたいな。それで千代とずっと一緒にいるんだ!』
『今日、千代が殿様に求婚されたと聞いた。悲しかったけどそんな姿を千代に見せるわけにはいかない。それに千代には幸せになって欲しいからわざと突き放した。分かっていたんだ…裕福な呉服屋の娘の千代と貧乏な商人の俺じゃ、釣り合わない…結婚しても幸せになれないって…千代…千代…どうか幸せになってくれ。千代が幸せなら俺も幸せだから…』
私は久し振りに涙を流した。あまりにも大きな声で泣いたものだから周りの人に心配をかけたけどそんなことも気にせず日記と、あの日、私が清十郎にあげたすっかりカラカラに枯れていたチメグサの花冠を抱き締めながら泣いていた。
「私は!私は傍にいてくれるだけで幸せだったのに!」
私の気持ちと同調するかのようにお城の外は大雨が降っていた…
ハッピーエンドも好きですが、時代背景を考えるとどんなにお互いを想っていてもあの時代は結ばれることは少なかったのではないかなと私は考えています。
ここまで読んで頂き、誠にありがとうございました!




