03 元バーサーカー、無敗の意地を見せる 1
「ねえ、あれって何なの?」
俺の驚きよりも先に、莉々がそれに気づいた。俺の背中に隠れながらも器用にちらちらと眺めている。
俺の記憶が正しければあれは――
「――機械仕掛けの兵士ってところだな……」
「そ、そうだよね。でもそんなのと戦えるの?」
「分からないな。だけど、あいつらは戦えているように見える」
一見すると学園の連中に見えるが、あいつらの気配は異世界の精霊にほど近い。
バーサーカーの英雄にまでのし上がった俺は、悪い精霊をも打ち倒してみせたから、そういう精霊の気配はすぐ分かった。
それはともかく、俺たちをここに連れてきた理由を女性に訊いておかなければ。
「すみません、あの機械兵と連中はなんで戦ってい――あれ?」
「ど、どうしたの?」
「いなくなってる……」
「え?」
俺たちを戦闘空間に連れて来た謎の女性は、まるで役目を果たしたと言わんばかりに存在ごと消えていた。
いくら何でも酷い話だろこれは。
俺の背中に隠れていた莉々も信じられないといった表情で戸惑いを隠せない。しかし、幸いにも今なら機械兵と精霊らしき連中に気づかれる心配はなさそう。
何故なら見えている空間だけが、どこか遠くの世界のように感じられるからだ。今のうちに来た道を戻って外に出れば俺たちが危ない目に遭う心配は――。
「逸器、あの機械兵たちがわたしたちを見てる……」
――ちっ、そう簡単にいかないわけか。
「えっ、こっちに近づいてくるよ? どうするの?」
……危なくなる前に莉々だけこの場から逃がすか?
あるいは万が一を考えて残ってもらう――どちらにせよ、迷ってる暇はない。
「莉々。お前は俺が奴らを引き付けてる間に……」
「歌って踊って気を引く!」
「……全然違う。お前は戦える異能者じゃないだろ!」
「だ、だってこれでも大人気Vチューバーだし、注目を浴びるのはお手のもの~って思ったんだもん。逸器にばかり負担を押し付けるのはよくないって思ったの」
配信してる時と今じゃ体にかかる負担も段違いだろ。それに、機械兵と学園の異能者連中……あいつらは何かヤバい気がする。
そう考えると人気者はともかく、ここで莉々を危険な目に遭わせるわけにはいかない。
「そういう逸器はどうするの?」
「何がだ?」
「だって、逸器は異能覚醒してないんでしょ? それなのにまともに立ち向かえると思ってるの? 人間相手ならケンカで無敗かもしれないけど、機械兵は人じゃないんだよ?」
莉々の言う通りではあるが、異能ってのは何もこの世界限定のものじゃない。俺がこっちに戻ってきてから使えてる力も、ある意味異能だからな。
闘京学園の大半のタレント持ちは、こっちの世界で生まれて覚醒を果たした。だから表面上だけの異能で判断している。だが、俺は元異世界住人。こっちの世界で覚醒を果たせられないのは当然と言えば当然だ。
「安心しろ。俺もただの人じゃない」
「えっ、ちょっと……逸器? 何で堂々と出ていくの! ねえ、待ってってば」
性格上、莉々に隠れろだとか逃げろと言っても無駄。それなら俺が先制攻撃を見せて、敵を一掃すればいいだけの話。
すでに俺と莉々の存在が向こうにバレてしまっている以上、中途半端に逃げたところで地上への帰還は叶わないだろう。
「とりあえず俺がやられそうになるまで動くなよ、莉々」
「う、うん」
機械兵は闘京学園や学園都市内にいるAIロボには見えない。だからこそ、異能持ち連中が戦えている。
俺の予想では、あれは旧式の機械兵。
――つまり、俺の攻撃でも致命的なダメージを与えられるはずだ。
「そこのお前ら、邪魔だ!!」
戦っている最中で悪いが、そいつらは全部俺がいただく!!




