第7話:一緒に立つための皿
朝日が差し込む頃、カイルは新しい提案をした。
「村の市に行きませんか?食材も買えるし、屋台も出るって聞きました」
ライアは一瞬、返答をためらった。人の目。自分の姿。義肢。かつて英雄と称えられた自分の“今”。
けれどカイルは続けた。
「・・・並んで歩きたいんです、あなたと」
その言葉に、ライアは視線を上げた。その瞳には、どんな剣よりもまっすぐな覚悟があった。
「わかった。行こう」
村の市は賑わっていた。焼き栗、蜂蜜漬け、燻製魚の香りが漂う中、ライアは肩に薄布を掛け、少しうつむきながら歩いた。それでも、隣に並ぶカイルの存在が、確かに背中を支えてくれている。
「試食どうぞー!」
子どもたちが勧める焼き芋を受け取り、カイルが「ありがとうございます」と頭を下げる。その姿に、ライアもつられて笑っていた。
「やっぱり、あなたがいてよかった」
市の帰り道、カイルがぽつりと言った。
「一緒に立てたことが、今日の料理の下ごしらえみたいに感じました」
ライアは振り返る。
「下ごしらえ?」
「はい。まだ完成じゃないけど、大事な準備。きっと、もっと美味しくなる」
彼女はしばし黙り、それから、ふっと口角を上げた。
「なら、今夜は二人で料理を作ろう。“本番”の味を」
その夜、小屋の中に漂ったのは、香草とバターの香り、そして、未来へのほのかな希望だった。