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25 【夢と現実】
何故か、幸運にも、王の道を歩かんが為に動き出したとき、色々なものが舞い込んでくるのだった。
彼は一国一城の主たるを夢見た。
しかし実際にはたった一人でしかなく、仲間も資金すらもなかった。
王侯貴族の知り合いもなく、また知っていたとしてもおいそれとは近づけない処に上っていって……いや、彼が下がってしまったために二度と顔を見合わせることができない処に来てしまったのだ。
王子様編の時にいっとき交わった傭兵と王子の友情、盗賊と王女の危険な恋、いずれにせよ、この時のクロス・ポイントでは彼に何ら現実的な影響を与えはしなかったのだ。
しかし、起死回生の一手は戦場、あるいは冒険の場にこそ見いだせるのかもしれない。
現実が、傲慢なまでにその王錫をふるう時、王と成るを諦め心折れかけたその時、自分の原点に立ち戻った彼の運命の輪は激しく廻り始めるのであった。