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されど服  作者: 高見香里奈
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 私は吉野さんの振る舞いに圧倒されていた。

 あの女性は帰りかけていたのに。

 数分後、四十代くらいのスーツ姿の女性が店にはいってきた。

『Marrisa』のターゲット層は二十代らしいのだが、百貨店ということもあり、

この店舗は他店に比べて客の年齢層が高いらしい。また、客単価も高いと店長がブランド説明の時に言っていた。

 店長と吉野さんが私に目で合図する。

声をかけろってことかな。

 女性はパンツがかかっているラックの方に行きパンツを手に取って見ている。

 意気込んで女性の元に行く。

「よかったら履いてみてください」

 ドキドキしながら言葉を発した。軽く会釈したその女性はすぐに店からでていった。

 あぁ、でていっちゃった。

 見かねた店長がこっちに来る。

「声かけは落ち着いてしよう。さっきのお客様、驚いていたよ。大丈夫だから、落ち着いて」

 あぁ、やっぱり。何かの発表会のようなテンションでお客さんに話しかけていたかもしれない。

 どうしたらいいんだろう。

「北岡さん、一緒にストックに行こうか。店頭に在庫がない商品が増えてきたから取りに行こう」

 パソコンを触っていた吉野さんが私に声をかけた。

 ストックルーム。初日の時に少し店長に案内してもらっていた。

 店舗ごとにスペースが設けられ、そこに在庫を置いておく。

大量の服や鞄が隙間なく棚に積まれている。まだ日の目を浴びていないデビュー前のアイドルの練習生のようだ。

 各商品の管理番号が手書きの長細い髪にラベルとして袋に貼られている。

 このラベルがなければ、折りたたまれて、袋にはいっている物はどんな服かわからないだろう。

「じゃあ、北岡さん。今日入荷した服にこのラベルを作って貼っていって」

「わかりました」

 吉野さんに渡された大きなショップ袋には、透明の袋にきれいに折り畳まれた服が三十枚程はいっている。

 吉野さんは細長い紙の束と、油性マジックを私に手渡した。

「貼れたら、見やすいように棚に並べて、在庫を整理しておいて。じゃ、頑張ってね」

 そう言って吉野さんはストックルームから出て行った。

ラベルに商品番号、カラー、サイズと商品名を書いていく。

わかりにくい物は特徴も書く。カラーにも番号があり、ブランドによってカラー番号が違う。

ここMarrisaでは、黒は99、白は01といった感じだ。

 しばらく作業に没頭し、ラベルを貼り終え、棚に積まれている服を整理する。

折り畳まれて袋にいれられた服は窮屈そうだ。

「このブルーのニットはここに置いて、この隙間に黒を置こう」

 積まれた在庫を商品番号とカラー別に並べ替える。

 びっちりと隙間無く、ラックにかかっていた服も商品番号と種類別に掛け替える。

「わっかわいい。こんなワンピースあったんだ」

 デニムのワンピースが掛けてあった。ドレッシーなピンクのシフォンワンピや、

キャラメルカラーの合皮のレザーパンツ等、店頭にでていないかわいい服がたくさんあった。

ついつい服のデザインを見てしまい、手が止まってしまう。


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