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されど服  作者: 高見香里奈
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 「おつかれーす」

 俺は従業員出口から出て、駅の改札に向かっていた。セールでくたくただ。ストックルームと店頭を何回往復しただろう。セール時の女性の熱量には、驚かされる。服を目掛けて走って入店したり、他の客と服を取り合ったり。今はもう慣れてきたが、初セールを体験した時は度肝を抜かれた。今日はさっさと風呂はいって寝よ。そんなことを考えて歩いていると、肩を叩かれた気がして振り向いた。

「高橋さん、お疲れ様でーす」

「白川さん」

 セール期間中だけ、こっちの店舗にヘルプできている他店スタッフだ。

「高橋さん、帰られます? ちょっと仕事で相談があつて……。よかったらちょっと飲みに行けません?」

 上目遣いで白川さんは俺を見る。上司の俺はこういう時、話を聞く必要がある。

 でも俺に? 何の相談だろう?

 近くの居酒屋で話を聞くことになった。

 大体相談は営業の俺じゃなくて、店長や副店長とかにするケースが多い。この子が普段勤務している店舗は店長も副店長も仲が良く、とくに問題が無さそうだけどな。

 カウンターの席で横並びに座る。注文を終え、話を聞く体制になる。

「で、相談って?」

「ええっと、その服がうまく売れなくて悩んでいて……」

 相談ってそれ? 思わず口にしそうになったが、その言葉を飲み込む。本来、そういう相談は店舗のスタッフにするもんじゃないのか。この子の接客もセール時期でちゃんとしたところを見たことがない。俺はどうアドバイスするか悩んだ。

「うまく売れないって例えば? 顧客様がつかないとか、セット売りが苦手とかあるじゃん」

 俺はこの子が何で悩んでいるか探るために具体例を挙げる。少しでも悩みを解消できたらと思う。

「えーっと、ちょっとわからなくなりました。

やっぱり接客のことは店長に相談した方が良さそうですね。ごめんなさい」

 白川さんはそう言ってビールを飲んだ。

「そうだね、接客に関しては店長の方がよく把握していると思うし……」

「そういえば高橋さんって彼女とかいらっしゃるんですか」

 そう言いながら白川さんは少し横に寄ってきた。近くね? と思いながら、今はいない、と答える。

「じゃあ、私にもチャンスありますね」

 白川さんは冗談とも本気ともつかない口調で言った。冗談だよなと笑って流す。明日もセールで出勤時間が普段より早くなるので、今日は早めに切り上げた方いいだろう。

「そろそろ出ようか」

 そう言って俺は立ち上がり会計をした。


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