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「おじゃまします」
通い慣れたはずの雄一の部屋が懐かしく感じた。
「この前はごめん、突然家に行ったりして。酔ってたのもあって電話もでねえから、勢いで行ってしまった」
「うん」
「で、俺らこれから……」
「私も色々考えたよ。雄一とは色んな思い出もあるし、でも……」
雄一との楽しかった思い出が浮かび、一瞬、言葉に詰まったが、思い直し言葉を続けた。
「私たち、別々の道を歩もう」
「……わかった」
雄一がそう言って、力強く私を抱きしめた。
「今までありがとな」
「うん。こちらこそ」
「恭子の荷物、まだそのままだから、必要なものは持って帰って」
私は自分の衣服や化粧品等を袋にまとめた。
雄一の空間から私の気配が消えていく。新しい道に進むという思いが強くなった。
「じゃあ、雄一身体に気をつけて、元気でね」
玄関で雄一に言った。
「恭子もな」
優しい声で雄一は言った。
「おう、後、恭子きれいになったな」
「ありがと」
マンションを出たら切なさで少し涙がでていた。色々あったけど、すっきりした。今までありがとう雄一。
翌日彩菜から携帯電話に写真が届いた。
化粧をばっちりして、プレゼントしたブラウスを着た彩菜の写真だった。
【ブラウス似合ってる? ブラウス着たらお洒落したくなって入院以来初めて化粧した笑
テンション上がったー。これ来て絶対パリ行くって誓ったよ。ありがとう】
ブラウスは彩菜にとても似合っていた。




