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自宅マンションのエントランスにはいろうとすると、携帯電話が震えた。
画面を見ると雄一の名前が表示されている。
でないでおこう、と携帯電話を鞄にしまうと同時に背後から声がした。
「なんで、でないんだよ」
振り向くと雄一が立っていた。
「雄一……?」
「今日、男と一緒に居ただろう。誰だよあいつ」
そう言って雄一は私の腕を力強く握った。
酒に酔っているようで酒臭い。
「雄一、どうしたの? なんの用?」
雄一は私に抱きついて来た。私は思わず突き放し雄一を見た。目が充血している。
「ごめん、恭子。やっぱり俺恭子とやり直したい」
マンションにはいろうとした時、雄一が言った。雄一は下にしゃがみこみ下を向いている。
「……考えさせて」
そう言ってエントランスに入る。
エレベータの中で冷静になる。
びっくりした。今は雄一のことは愛しているという恋人への感情はないものの、やはり三年過ごした時間で、情のようなものは残っていた。
「やり直すって……」
一週間私は考えた。雄一とやり直すか、それとも……。
今日で彩菜の見舞いは三回目。病室を開けると彩菜はノートに何かを書いていた。
元気そうで良かった。近況報告を終え、持って来たMarrisaの袋を彩菜に渡す。
「ちょっと早いけど誕生日プレゼント」
「えーありがとう! 開けていー?」
そう言って彩菜はリボンをほどき、袋を開封し、ブラウスを取り出した。
「かわいいー! めっちゃ好み。ありがとう!」
「彩菜、似合いそうだなと思って」
気に入ってくれて良かった。選んでくれた有紗ちゃんに感謝する。
病院の帰り、待ち合わせの場所に向かった。
久しぶりに来た雄一の部屋。




