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されど服  作者: 高見香里奈
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「北岡さんこっちこっち」吉野さんが手招きをした。

 急いで吉野さんの隣に行く。

「開店時間はここに立ってお客様をお迎えするんだよ」

 周りの店舗もみんな同じように入り口に立って、入店してきた客に微笑みながら、いらっしゃいませ、

 と挨拶をしている。

 そういえば、朝から買い物に行くと百貨店の店員さんはこんな感じで挨拶をしてくれていた気がする。

 いざ自分がこうやって立っているとなんだか気恥ずかしい。

 ピアノの音色が鳴りやみ、洋楽のBGMに切り替わった。その瞬間、

 従業員達はぞろぞろとその場を離れ、それぞれの業務を再開した。

 百貨店の研修は動画を見て説明を聞くというものだった。私以外に数人の他の従業員もいて、

 年齢やブランドもばらばらだった。

 言葉遣いや、お辞儀の角度、館内のルール等それらの説明が終わり、その後にそれらに関する筆記試験を終えた。

 従業員の食堂でランチを取り、一時間の休憩を経て、店に戻る。

 店では午後出勤の遅番の店長が、三十代くらいの女性を接客していた。

 私はどこにいて、何をすればいいかわからず、もじもじとしながら、

 なるべく二人の邪魔にならないような場所に移動する。

「じゃあ、このワンピースで」

 客の女性はそう言って店長にクレジットカードを渡した。

「ありがとうございます。少々お待ちください」

 そのカードを受け取った店長は、レジに行ってきます、と私に聞こえるように大きめの声で言い、

 集合レジに向かった。

 店に取り残された客の女性と私。女性は店長から渡された今季のカタログを読んでいる。

 何か、声をかけた方がいいのかな? でもなんて? ええっと……。

 そんなことを頭の中でぐるぐると考えていると、店長が戻ってきた。

「お待たせしましたー。あっ、このパンツかわいいですよねー」

 そう言って女性客とカタログの服の話で盛り上がっている。

 

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