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雄一は酒にかなり酔っ払っているようで呂律が回っていない。
「きょうこーきれいになったなー。お前テレビにでてたんだってなー」
雄一はそう言って私の肩を抱いた。
酒臭い。
やめて、と言いながら手を振り払い、トイレにはいった。
あんなに酔っ払った雄一を見たのは初めてかもしれない。
あんな感じだったっけ? よりによって雄一に会うなんて。
フロアに戻り、バーカウンターの隅でダンスをしている人々を眺めていると、横からふわっと甘い香りがした。
「お姉さんおしゃれだね」
声の方を見ると黒髪でセンター分けのイケメンの男性が笑顔で私を見ている。この人はモデルか芸能人か何かだろうか。
「名前は?」
「恭子です」
「恭子ちゃん、俺は翔太。つーかその服、めっちゃかわいいね。似合ってる」
「ありがとうございます」
話しを聞くと、翔太はモデル兼服のデザイナーをやっているそうで、私のファッションに今インスピレーションを受けたらしい。
私が有紗ちゃんに影響された感覚に近いのかもしれない。まさにファッショッン業界の人という雰囲気だ。
「恭子、さっきの子、超有名なモデルの子だよ」
トイレから戻って来た彩菜が言った。
数時間音楽を楽しんだ後、私たちは帰ることにした。出口に進むと、雄一の姿があった。
目が合うとまた雄一は私の手を引っ張った。
「やめて!」
雄一の手を振り払い、出口に向かう。
「お前、調子乗ってんじゃねえぞ」
雄一は吐き捨てるようにそう言って場所を離れた。
「恭子、大丈夫? 雄一君の態度なんなの?」
彩菜が怒りと心配を交えたような顔で言った。
今日の雄一は酒で酔っていたせいか、異様だった。あぁ、神様、世界は広いのにどうして雄一と再会させたのでしょう。
「恭子、なんかごめんね、まさか雄一君が来てると思わなかった」
彩菜が言った。
「いいの、もう忘れたから」
本当は雄一に苛ついていた。そして胸が痛んだ。
彩菜と話しながら出口の階段を歩いていると
一瞬彩菜の姿が視界から消え、同時にきゃぁとう彩菜の叫び声が聞こえた。
彩菜は足を踏み外して階段から転げたらしい。
「彩菜、大丈夫?」
彩菜に駆け寄った。
「やばい。足くじいたかも」
足をさすりながら立とうとするが、片足が痛いようで、私は彩菜に肩を貸し、一歩一歩ゆっくりと進んだ。
彩菜をタクシーに乗せてから、自分も別のタクシーに乗り込む。家に着くまで今日の出来事を回想する。ファッションショーの感動。
服は芸術だなと思ったこと。アフターパーティーでの華やかな雰囲気と雄一。今日は色々なことがあったなぁ。
タクシーの中から過ぎゆく高僧ビルを眺めながら物思いにふける。




