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連れられた店は今若者に人気のバー、で白を基調としたモダンな空間だった。
展示品なのか、誰かが弾くのかわからないが、店の中心には真っ白のグランドピアノが置かれている。
店の奥ではDJブースがあり、DJとして金髪の白人男性が音楽を流しているようだ、
アップテンポな曲がかかり、店内にはぞろぞろと人がはいっている。
皆、洒落てる。何この空間。
私は今日自分が着てきた服を見て後悔した。
そういえばここ一年くらい、服にあまり気を遣わなくなったかも。昔はトレンドのをチェックして、買い物に行っていたのに。なぜだろうか。雄一とずっといると、なんか安心してお洒落をする体勢にならなかったのかも……。という言い訳はやめよう。自分に矢印が向けられてなかった。それに、実は昔より太ったのも買い物から遠ざかった原因の一つかもしれない。
今私の前を横切ったポニーテールのかわいい女の子。素敵なピンクのスカートを履いている。
えっなんか。今すごい衝撃。何だろう。この私との違い。その女の子が向かった先のテーブルには素敵な洋服に身を包んだかわいらしい女の子達が楽しそうに談笑している。
なんかきらきらしてる。眩しい……。
「ここお洒落でしょ」
「うん。なんか衝撃」
さっきすれ違った女の子が彩菜に向かって手を振りながらに歩いてきた。
「あー! 彩菜さんーこんにちは」
「有紗ちゃんじゃん」
彩菜は女の子に手を振った。
「あー着てくださってるー! 素敵!」
有紗という女の子は彩菜のブラウスを見て嬉しそうに言った。
「そう。すごくこのブラウス褒められるんだ。買ってよかった」
彩菜と楽しそうに話している有紗という女の子をまじまじと見る。
どうやら彩菜がいつも行っている服屋の店員さんのようだ。
目にピンクのアイシャドウをしていて、すごくかわいい。雰囲気に似合っている。まつげがくるんとカールしている。まるでお人形のようだ。かすかに甘い香りが漂う。
「恭子も今度一緒にMarrisaに行こう。めっちゃ服かわいいの多いんだって。こっちはいつも担当してくれてる有紗ちゃん」
「はじめまして。有紗って言います。また良かったらお店にいらしてください」
「はいっ……」
私はきらきらとした有紗ちゃんに見惚れながら軽く会釈する。
じゃ、また、彩菜と私にお辞儀し有紗ちゃんは元にいたテーブルに戻っていった。
「彩菜」
「ん?」
「なんだっけ? 有紗ちゃんのお店の名前?」
「Marrisaだよ。今度一緒に行く?」
「行きたい!お願い」
なんか、すごいものに触れたような。素敵な女の子。女子力? お洒落力?
なんだ、このインパクト。今まで鎖国していたような気分。
私は有紗ちゃんという女の子に強く影響されてしまった。今日は出かけてよかった。外の世界に触れた感覚。本当はふとした瞬間、雄一が恋しい。
でも、もう決めたから。新しい自分になりたい。なんか今日、そう思った。




