57
はぁ? 何これ?
私はそれを見た瞬間、なんとなく最近感じていた雄一への違和感が腑に落ちた。
なるほどね。これが女の勘というやつだ。
昨日の夜、いつも雄一から連絡があるのに無くて、今日の昼に連絡がきて、さっき会った瞬間、聞いてもいない昨日の予定を疲れて爆睡してたって、早口で私に伝えたこととか。
最近連絡が少なくなったこと。あとは……。
「恭子―。映画何観るー?」
雄一の間抜のけた声がした。
私は怒りでいっぱいになりながら、そのピンクの歯ブラシを持って、雄一の元に向かった。
「雄一、これ何?」
私は手に持った歯ブラシを雄一の顔の前に突き出した。
雄一の顔が一瞬、こわばった。
「いや、その、昨日友達が来たんだよ」
昨日疲れて爆睡してたんじゃないの? さっき早口でごまかしたことくらい覚えときなよ! 詰めが甘いんだよ!
私は怒りで歯ブラシを放り投げた。
「この嘘つき!」
「ちょっと待てよ。恭子。落ち着けよ」
大手広告代理店の営業という仕事柄、少しチャラついたた雰囲気を漂わせていたが、真面目だと思っていた。
そして今まで、浮気未遂はあったが、今回はアウトだ。
私は将来について真剣に向き合わない雄一へのストレスが無意識に溜まっていたのもあって雄一に向かって叫んだ。
「別れよ」
「えっ」
「さよなら」
私は勢いで玄関に向かい、自分の仕事用のシンプルな合皮の鞄を掴んで玄関の外に出た。
言ってしまった。ついに。付き合った三年間が終わった。
結婚に対して何も考えて無さそうな雄一に対してだらだらと続けるより、きっぱり別れてしまった方が将来のためだと心のどこかで思っていた。ついに実行してしまった。
でも、本当に別れて良かったのか?




