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されど服  作者: 高見香里奈
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 ついに、明日からお店に立つんだ。ブラウスとパンツを脱ぎ、元のスーツに着替えた。

 ブランドの説明を店長から受ける。

 『Marissa』の今季のテーマーはパリの小さなホテルだそうだ。

 さっき私が着ていたフリルのブラウスとパンツは、そのホテルで働くコンシェルジュをイメージしていて、

 ピンクのスカートはマカロンを食べる客だそうだ。

 コレクションでもピンクのスカートは人気だったらしい。

 今季のカタログを見ていく。

 ページをめくる。華やかな映画のワンシーンのようなカットで白人のモデルがポージングをしている。

 ブラウス、スカート、パンツ、ワンピース、ニット、ジレ、ジャケット。

 あぁ、なんてかわいいのだろう。このコーディネートは。

 許されるなら、カタログに載っている服を全部買ってそのまま自分のクローゼットにいれてしまいたい。

 高ぶる気持ちに何か懐かしい気がした。

 今季のテーマに沿ったヘアスタイル、メイクも提示される。

 ヘアカラーは派手なカラーはNG。ホテルのイメージなのでコンサバなイメージで。

 ヘアセットの仕方まで資料に載っている結ぶゴムはシンプルな黒系。

 ポニーテールは低く結ぶとカジュアルなイメージになるからだめで高めに結んで、

 裾をコテ等で巻くならオッケー。

 メイクは眉毛をしっかりと太めで、知的な印象に。シャドウはブラウン系、淡いピンク。

 派手になりすぎるので大ぶりのラメはだめ。

 リップはベージュ、ピンク、オレンジ、赤を指定。ただし、きつい赤はだめ。

 アパレルだからヘアメイクが自由だと思っていたけど、逆にルールが細やかに決められているらしい。

 各ブランドの店員さん達は統一完のようなものがある。

 私たちがランウェイモデルで、店頭がコレクション会場のようになるのか。


 従業員出口をでて駅に向かう途中、ひんやりとした風が一瞬身体を包んだ。

 春になりたてのこの時期の夜は春なんだけど、まだ寒い。

 だから今着ているような、トレンチコートやジャケットを着たり、

 ブーツを履ける存分にお洒落が楽しめる貴重な時期でもあるのだ。

 くたくたになった頭の中と身体は休憩を欲していた。

 春休みは昼夜逆転するくらい、友人達と遊びに行ったり、深夜まで海外ドラマを観たりしていた。

 今日からそんな生活とおさらばし、朝から長時間働くのだ。

 スーツを着た男性や仕事帰りだと思われるOL風の女性達が足早に駅に向かっている。

 私もつられて歩く速度が速くなる。今日試着室で着た服を思い出す。

 フリルのブラウウスとピンクのスカート、センタープレスのブラックパンツ。

 明日着るのが楽しみだ。コーデに合うように、明日はポニーテールにしてみよう。

 メイクはピンク系のシャドウをつけてみようかな。

 考えるだけで疲れが解けていくようだ。気がつくと口元の筋肉がゆるんでいた。


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