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されど服  作者: 高見香里奈
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 花で人を感動させる、そんな千花さんのようになりたい。昔思い描いた夢をこの歳になって認識するなんて何があるかわからない。

 千花さんとの出会いはこの服を褒められたのがきっかけだったっけ。

 そんなことを思い出しながら、涼子はグリーンのワンピースをちらりと見てクローゼットを閉めた。


 面接を終えた数日後、涼子の携帯電話が鳴った。

 知らない番号だった。電話をとると、それは面接をした企業からだった。涼子の心臓がばくばくと鳴る。

 内定の連絡だった。ウエディングやホテルのフラワーコーディネートを専門としている大手会社に涼子はついに転職することが決まった。

 面接で、はっきりと自分のビジョンを述べることができた。花という特別な存在。花を通して私が受けたような感動と幸せを人に与えたい。熱意を持って志望動機を伝えた。

 仕事は想像以上にハードだった。花は生き物。鮮度を保たなければならないため、水や状態の管理をまめに行う。朝から市場の仕入れに同行することもあった。夜はフラワーアレンジの練習をした。毎日が目まぐるしく時間が過ぎ、一年、二年とあっという間に過ぎた。

 いつかあの千花さんのように……。


 百貨店のお気に入りの店Marrisaに足を運ぶ。今日は会社の五周年のパーティーが開催される。そのパーティー用のワンピースを涼子は買いに来ていた。店内にはいると、こんにちはーとにこやかに店員が涼子に挨拶した。

 その店員は店の奥で作業していた女性に店長―平田様がお越しです、と声をかけた。店長と呼ばれた女性は涼子の元に歩いてきて

平田様こんにちはと涼子に挨拶する。

 いつも涼子の担当をしている店長の北川有紗という名の店員だ。会社の五周年パーティー用のドレスを探していることを店長に伝える。いつもこういうものを探していると言うと、数分後にはぴったりの服を持ってきてくれるのだ。涼子は店長のこの女性店員に絶大な信頼を置いていた。

 そういえば、昔おなじような状況があったような気がした。なんだっけ、と涼子が考えていると、店員が服を何枚か持って戻ってきた。

 花柄のシフォンワンピースと黒のホルターネックのシンプルなワンピース。

 直感的に黒のワンピースが良いと思い、試着することにした。


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