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「とても素敵なワンピースですね」
黒のシンプルなロングドレスを着た長身の女性が涼子に声をかけた。年齢は四十歳くらいでブラウンのロングヘア。大人の女性という印象だ。
「ありがとうございます」
「こちらで買われたもの? 素敵」
由香の母親と元々知り合いで、由香とも仲良くなり今日このパーティーに呼ばれたのだという。
お花のお仕事をしているの、そう言って女性は涼子に名刺を手渡した。
【フラワーアーティスト 吉岡 千花】
「フラワーアーティスト……?」
「ええ。主にイベントやホテルなんかのフラワーコーデをする……」
「じゃあ、もしかしてここの会場のお花は?」
「そう。私が担当したの」
それを聞いて、涼子は胸の中が飛び跳ねたような衝撃を感じた。こんなに美しい空間を創造できるなんて素敵だ。
このパーティーに訪れた瞬間、無意識に涼子の視線は、ずっと美しい花達に向けられていたのだ。ふと記憶の隅に追いやられていた、自身の幼少期の夢を思い出した。
お花が大好きだった。そういえば、お花屋さんになりたいと言っていた。花屋へ母親に連れて行ってもらった時、きらきらと花が輝いて見えた記憶がある。
パーティーはお開きの時間となり、由香に別れを告げ、涼子はホテルに帰る。
帰り道の途中、水が飲みたくなり、ホテル近くのABCストアでミネラルウォーターを購入する。
「 love your dress!」
レジの女性店員が、涼子に声をかけた。服は語学も不要のコミュニケーションの一つのようだ。
ホテルの部屋に着くと、涼子はワンピースを脱ぎ、ハンガーにかけた。涼子は胸が高鳴っているのを感じた。今日もらった名刺を眺めながら、パーティー会場での美しくコーディネートされた花を思い出す。いてもたってもいられず、吉岡千花の名刺に記載されたメールアドレス宛に挨拶メールを送った。




