表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
されど服  作者: 高見香里奈
34/78

34

 翌日、従業員エレベータに乗ると、偶然にも亮くんが乗っていた。おっ、と亮くんは手を挙げた。私も小さく手を挙げて挨拶をする。なんだか恥ずかしい。仕事の帰り道に携帯電話に亮君からメッセージがきていた。

 それは映画の誘いだった。そういえば昨日映画が好きという話で盛り上がった。お互いの休みが合った次の週末に映画に行くことになった。

 映画に行く前日、私はクローゼットを開いて服を取り出し、あれでもない、これでもないと服を広げた。

 お客様にはすぐにアドバイスできるのに、自分がいざ着ていこうとなったら、迷ってしまうのはなんだかおかしい、と笑ってしまう。

 結局、レースチュニックにデニムという組合せにすることにした。こういう服選びも楽しいものだ。服も決まったし、明日は楽しみだな。


 待ち合わせ場所の映画館の入り口に向かうと、亮くんが立っていた。デニムにシンプルな黒のTシャツを着ている。いつもスーツ姿なので新鮮だ。映画はラブストーリーで、なかなかおもしろかった。

 映画の後、二人でイタリアンのダイニングバーにに行った。

 家族の話し、好きなファッションの話し、好きな音楽や漫画の話等会話が弾む。

 亮くんは仕事柄女性向けのファッションブランドに詳しかった。二人とも明日は仕事ということで早めに解散をした。

 帰宅後楽しい夜だったな、と思い返す。亮くんとは映画やファッション等好きなものが似ていて、話していて楽しかった。また会えてらいいな、って明日も百貨店で会うかもしれないか。何かが始まりそうな予感を胸に秘めて幸せな気持ちで眠りについた。

 翌日ストックルームで亮くんの姿を見かけた。店員かと思われる女性と楽しそうに話をしている。女性はやだーと言いながら亮くんの肩を触っている。なんか親密な感じ?

 そんなことないよね? 一瞬不安に見舞われたが、思い直しストックルームを後にした。

 亮くんとご飯に行く約束をしていたが、その日仕事で行けなくなったのでリスケしてほしいという連絡があった。

 それから数週間後、休みだったので、ミナとランチをする約束をしていた。予約した人気のパンケーキの店に向かう。

 横断歩道が赤になり信号を待っていると、反対側の歩道に亮くんと女の人が歩いている姿が見えた。

 あの女の人に見覚えがある。ストックルームで楽しそうに話していた女性だった。

 やっぱりあの人は彼女だったの?

 ミナに会い、パンケーキを食べていると、ミナが私の顔を覗き込んだ。

「有紗、なんかあった?」

 浮かない顔をしていたらしい。さっき見た亮くんのことを話す。

「彼女ってことはないと思うよ? だって……」

 そう言って考え込んだ。

 「いいや。今はとりあえずパンケーキに集中しよう」

 甘いふわふわのパンケーキを咀嚼する。自分の気持ちをごまかした。

 数日後、従業員入り口で亮くんとすれ違った。

 おつかれ様、と亮くんは言った。いつもと変わらない表情。あれから亮くんからは連絡も無いし、終わったのかも。私の恋。あれは甘酸っぱい恋だったのだ。

 そんなことを思った日から一ヶ月が経った。

 以前はちょっと気になる恋心のある男性だった亮君だったが、同じ百貨店で働く男性として認識が変化していきつつあった。

 完売していたピンクのフレアスカートが今日再販で入荷したので、私は久しぶりにそのスカートを着用した。入社当時の初めての着用で履いていたもので、個人的にとても思い出深いスカートだ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ