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されど服  作者: 高見香里奈
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 セールまでの準備期間、私たち店員は服を売り、数字を取る販売係と裏のストックでセールの準備をするセール準備係に別れた。広くは無い裏のストックに、届いた大量のセール商品をいれていくのだからストック整理がとても重要となってくる。セールはすぐに商品が消化されていくため、売れたものをまめに補充しなくてはならない。そのためには商品番号、色、サイズがすぐに把握できないといけない。また、売れそうな物はすぐに取り出せるように、前の方においておく。まだ見ぬセールという物を想像しつつ、ストック整理に励む。他の人が見てすぐわかるように。

 そんな風に以前は思ったりしなかった。Msrrisaの店員として働くようになって、お客様の目線で常に接客することを心がけるようになった。自然と日常でも相手の立場で、そんな目線が持てた。

 床に座り込んで服を綺麗に取り出しやすいように棚に収納していく。数時間その作業に没頭し、ようやく今日届いた段ボール五個分の大量の商品を棚にしまうことができた。接客とはまた違う疲労感を感じる。今日商品を整理したおかげで、どの商品がセール品であるか、その商品のサイズ、カラー展開、在庫数がなんとなく把握できた。

 ストック整理はこういうことを把握できるので、大事なのだ。


 セール準備の一つにDMを書く。顧客様にセールのお知らせをするために葉書を送るのだ。

 メールは効率的で良いのだが、やはり手書きのメッセージは特別の意味を持つ。ピンクの背景に白で全面にMarrisaと書かれた葉書の裏に、ひとりひとりのお客様に当てた商品の案内や。メッセージを書いて送付する。私はお客様の顔を思い浮かべ、接客時にお話した内容を思い出し、その人に合う洋服を考えて葉書を書いていった。


 ついにセール開始日となり、いつもより早く仕事に向かう。初めてのセール。客側だつた自分からは、こんなにセールの準備が大変だったなんて思いもしなかった。

 店に着くと、既に副店長の吉野さんが来ていた。

 数分後に店長、谷口さん、日高さんそしてMarrisaのマネージャー松田さんがヘルプで店に到着した。マネージャーは普段は本社にいるのだが、こういうセール等のイベントがあるとヘルプとして店頭に来てくれる。

 それぞれ、セールミーティング時に指定されたセール対象商品を着用して、セールバージョンの衣装となっている。やはり指定された服は、それぞれの良さが引き出されてて良い感じだ。今日私が着ているのは、本社から支給されたパールがついているTシャツに、デニムのロングスカートだ。着用アイテムは個人で社員販売価格で安く購入するか、店から支給された物を着るかどちらかである。

「北岡さんはスカート似合うからセール時の着用はデニムスカートね」

 先日のセールミーティング時に店長がそう言って、このパールTシャツとデニムスカートがプリントされた紙を私に渡してくれた。

 実際私がスカートを履いて接客するとお姉さんが履いてるスカートかわいい、と言って購入してくださるケースが多い。最初はなんだか恥ずかしかったが、今はどんどんアピールできるようになった。今日はたくさん売ろう。スタッフ全員で朝礼をする。いつもよりピリッとした空気感を感じ、背筋が伸びる。

 今日の予算、個人のフォーメーションの確認、顧客の来店予定時間等確認し合う。

「よし! 今日が初日。予算とれるよう楽しく頑張りましょう!」

 店長の言葉で気合いがはいる。

 今日からセールの店が多く、周りの店も普段とは違う雰囲気だ。『SALE』と書かれたポップが貼られ、めらめらと燃え上がる気合いはスポーツの試合前のような空気だ。開店時間は十時だが開店前から百貨店の入り口には列ができていた。


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