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されど服  作者: 高見香里奈
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 三十代だと思われるスーツ姿の女性がデニムを手にとり、私に声をかけた。

 サイズを確認し、フィッティングルームに案内する。女性が着替えている間に、デニムに合いそう、かつ女性に似合いそうな服を探す。レースが施されてる白のコットンチュニックを手に取る。

 女性が試着室からでてきた。

「デニム、すごくシルエット綺麗でいい感じ」

 女性は鏡を見ながら、満足そうな表情で言った。

 デニムの裾を整えた後、用意していたチュニックを手に持ち、女性に言った。

「こんな感じでチュニックを合わせてもかわいいですよ」

「あっかわいい。これも着てみていい?」

 そう言って女性はチュニックを手に取り、再び試着室にはいっていった。

「とてもよくお似合いです。足元をこんな感じのパンプスで合わせていただくと、きれいめな雰囲気で着ていただけます」

「わーぁ、かわいいパンプス。履いていい?」

 そんな調子で、女性は紹介したトレンチコートやスカート、アクセサリーや鞄を試着し、鏡で持って眺めた。

 試着をするからといって、商品を購入するとは限らない。試着室のドアが開いて、女性がでてきた。

「いかがですか」

「どうしよ……」

 女性は悩んでいるようだった。数分後、女性は私に向かって言った。

「デニムとチュニックとパンプスとスカートとトレンチ、後このアクセサリーと鞄、全部買います」

 えっ? 全部?

 まさかトータルで購入してくださるとは思っていなかった。

「ありがとうございます。ご用意いたします」

 商品の用意は谷口さんがしてくれた。会計を告げると女性は、これで、とカードを取り出した。

 カードを受け取り、店にあるカードの会計機にカードを通す。

 会計機の画面に『カードはご使用できません』の文字が表示された。

 あれ?

 再度、カードを通す。やはり同じ文言が表示された。

「お客様、カードがご利用できないようです」

「あっ、やっぱり。じゃあ、こっち」

 そう言って女性は財布から新たなカードを取り出し、私に手渡した。再度受け取ったカードを機械に通す。

 会計機の画面に再び、『カードはご使用できません』の文字が表示された。

 もう一度通してみるがやはり同じ表示がでた。

「こちらもご使用できないようです」

「えっ……。じゃあ、こっちで」

 女性は新しいカードを私に手渡した。

 祈るような想いでカードを通す。

 今度は無事カードが通り、精算されたレシートがでた。女性にカードを渡し、サインを受け取る。

 出口まで女性を見送り、商品のはいった大きな紙袋を手渡した。

「かわいいから、いっぱい買っちゃった」

 そう言って女性は店をでた。


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