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「お疲れ様ー」
生ビールがはいったジョッキを合わし、私達はビールをゴクリと飲んだ。
仕事の帰りに飲むこの一杯のおいしさは、学生時代は知らなかったことの一つだ。
「店長、ほんと厳しくて。声かけしないと、背中押される」
「そう。ノルマにも厳しいし。ヘアメイクもチェックはいるから、ほんと嫌だ」
梨香子が言った。
「わかる。売れなかったら怒られるもん。有紗の店の店長、優しそうでほんと、羨ましい」
三杯目のビールをグビグビと飲みながら、咲が言った。
ミナの店長も厳しめらしいし。私の店長は優しい。
「あー。社会人って大変だよねー」
咲がトイレに行っている間、梨香子が口を開いた。
「店長が怖過ぎてさー。それに梨香子と比べられるのが嫌。売り上げとかもそうだし。なんかしんどいよ」
「比べられるのは確かに嫌だよね」
ミナが言った。
同時に同じ店に配属されたら嫌でも比べられるのか。確かにそれは嫌かも。
「なんか、梨香子は店長に気に入られてるからまだ優しいんだけど、私にはすごくきついんだよね。なんかなー」
ため息をついて咲はビールを飲んだ。
「私も最近ようやくなれてきたとこだけど……。店の服が全然タイプじゃない。もっと派手なのがほんとは好きなのに」
ミナが言った。確かにミナの私服と今ミナが働いてる店とでは、全くと言っていいほど、テイストが違う。
店はシンプルなデザイン、モノトーンが多く、自立した女性をコンセプトとしているが、ミナの私服はベビーピンクやミントグリーン等が色物が多く、海外のお洒落なファッショニスタといった感じである。
「まっ、コスプレ感覚で割り切ってるけど」
そう言ってミナは笑った。
私は皆のように、Marrisaに何か不満とかあるだろうか?
そんなことよりも、どうすれば店長や吉野さんのようになれるんだろう、ってここ最近考えている。
お開きとなった後、私は駅のホームでミナと電車を待っていた。
「なんかさ、わたしたちの職場環境、恵まれてる方なんだって思った。他の同期も大変な店は大変らしいよ」
ミナが言った。
「そうみたいだよね」
「私も正直そんなに不満とかは無いんだよね。なんか、店長を見てると、私もあんな風にかっこよくなりたいな、なんて思う。怒った時は厳しいけどね」
ミナも私と同じことを考えていたんだ。私も店長みたいになりたい。
「ねぇ、私ら店長目指そうよ」
「えっ?」
私の発言にミナが目を丸くした。
「うん。そうだね。かっこいい店長になろう」
ミナがそう言うと、ちょうどホームに電車が到着した。ドアが開き私達は乗り込んだ。
今日ミナと交わした約束。
絶対に実現するぞ。そんなことを心に誓った。




