16
「この子、私に買ってもらえる時だけついてくるのよ」
母親が冗談っぽく、嬉しそうに言った。
「えへへ。ママありがと」
女の子はそう言って
「今からどこかおでかけですか」
「今日は探してたコートも見つかったから、後はご飯を食べに行くって感じ」
普段、母親とは離れて暮らしてるそうだが、今日はコートを買ってもらえるとの約束で
(ただし、母親の好みの服でないとだめらしい)久しぶりに会ったようだ。
「ワンピース、とてもお似合いでしたので是非着てくださいね」
私はワンピースとトレンチコートを一番大きいショップ袋にいれながら答えた。
「私が気に入っちゃったわ。そのワンピース。私ももう少し若かったら着ているわ」
母親が笑いながら言った。
出口に案内し、女の子に袋を渡した。
「あー楽しかった。かわいい服多いわね、ここ」母親が弾んだ声でいった。
「私もここのお洋服好き。また来ようママ」
そう言って女の子は袋を受け取った。
「ありがとうございます」
「ありがとう」
女の子と母親は何かを楽しそうにしゃべりながら店を後にした。
私はその後ろ姿が見えなくなるまで見送り、一礼して店内に戻った。
心がぽかぽかと温かくなった気がした。
「北岡さん、やるじゃん。
ハンガーを片付けていたら、店長が私に声をかけた。
そういえば、さっき買ってくれた親子にワンピースを提案できたのは、
谷口さんがロープレで教えてくれたからだ。
それが無かったら、コーディネートを思いつかなかっただろう。
それに、ワンピースの色違いを母親から聞かれた時もすぐに返答できた。
恐るべし、ロープレ効果。勉強になるなぁ。ロープレ。確かに。咄嗟にコーデを提案できるのがプロなのだ。
しかもその人に似合うものを。必要としているものを。洞察力が必要だ。探偵のように。
私も店長や、吉野さん等のように、プロに成りたい。




