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「ありがとうございました」女性に紙袋を手渡す。
「ありがとう、また来ます」そう言って女性は笑顔で店をでた。
一気に力が抜けた。初めて売れた。
やっと……!
「北岡さん、売れたね」
店長が小さく拍手をしながら言った。
「はい」
嬉しかった。一生売れなかったらどうしようなんて最初考えたりした。
最初は自分のことに意識が集中してた。
でも、今は相手を見れるようになった気がした。
私が配属された店舗には店長の橋本さん、副店長の吉野さんの他に、谷口さんと日高さんがいる。
谷口さんは明るくておもしろい。日高さんはハーフモデルのようなビジュアルで、おっとりしている。
この私を含めた五人がこの店舗のフルメンバーである。
出勤時の人数は休日は四、五人で平日は大体三、四人で回す。
今日は店長、吉野さん、谷口さん、私の四人の出勤で、吉野さんはストックルームで作業をしており、
店頭には私と店長と谷口さんが立っていた。
平日ということもあってか、朝からフロアが閑散としている。客の入りが少なかった。
「北岡さん、ロープレしてみよっか」
店長が私に声をかけた。
「ロープレ?」
「そう。今日はお客さん少ないから練習がてら」
そう言って店長はいたずらっぽく笑った。
店長はたまに無邪気な子供のような表情をする時がある。
普段はかっこいいお姉さんって感じなのに。そういうところが素敵だなと思う。
「谷口さん北岡さんとロープレして」
「あ、ロープレですか? おっけーです」
ガラスカウンターのガラスを拭いてた手を止めて谷口さんが答えた。
ロープレが始まるようだ。一体なんだ?
ロープレって……。




