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到着

「いやぁ、それにしても思ったよりも町が遠く無くて助かったな。あまり遠すぎたら飛行スキルを使うことになるところだった。スキルはできるだけ使わないようにしておきたいからな。本当に切羽詰まった時だけって決めとこう」


 目的地の町を目指し、森を一人歩く。

 ぶつぶつと喋っているが、誰もいないところで独り言を言うくらいのことは許されるだろう。やっぱり口に出したほうが思考がまとまりやすいんだよな。


「そういえば俺が倒してしまったモンスターは普通にこの森に生息しているもんなんだろうか?」


 俺の計画を狂わせたモンスターがまだ出てきては困るんだよな。これ以上討伐しようもんならレベルが五桁の大台に突入してしまう。

 絶対にそれだけは阻止しなければならない。見つけたとしてもスルーするつもりだけど、不慮の事故で討伐してしまう可能性はあるからな。気をつけておくに越したことはないか。


 別に急ぐ理由もないのでまったりと歩きながら町を目指しているが、モンスターの気配はまるでない。


「これって、じいさんが気を使って転生の場所はモンスターが出現しにくいところを選んでくれてたのか?」


 森なんてもっとバンバンモンスターが出てきてもおかしくなさそうな場所なのにこれは違和感が凄い。

 俺の勝手な想像でしかないからこの世界で森はモンスターがあまりいない場所なのかもしれないな。


「でもこの森にいきなり転生させられても、迷子になってただけなんだよなぁ。俺は運よく千里眼をゲットしたからよかったようなもんだ。スキルがなかったら適当に歩き回る羽目になっているんだから、スキルさまさまだよな」


 こんなに便利なスキルを持っていてはこれからの生活の難易度が各段に落ちてしまう。俺は苦難を乗り越えて成長していくのを目指してたんだ。スキルを封印すれば少しは似たような体験ができるだろう。


 そんなこんなで進み続けること数十分――ようやく森を抜けられそうだ。


「あそこで森も終わりか。結構歩いたんじゃないか? 疲労感がないのがおかしいが、気にしてもしょうがないしな。進もうか」


 森を抜けると、奥のほうに町が見えた。

 目視で確認できるとやっぱり気分的にも余裕ができるよな。もうあそこへ向かうだけだ。


「この世界の人々はどんな生活をしてるんだろうな。モンスターがいる世界ってだけでも大変そうだけど、魔王なんて奴までいるんだろう? 結構さびれた生活かもしれないな」


 転生して初めての町だ。

 どんなものなのか好奇心が溢れてくる。俺も今日からはここで暮らすんだ。とはいえ、あまりに合わなかったら別の町へ移動することになるんだけど……そうならないように祈ろうか。


「とりあえず、金を稼ぐところから始めないとな。最後の手段で俺が倒したモンスターの素材を売るってところだが、あのモンスターはちょっと嫌な予感がするんだよなぁ」


 レベルがありえないほど上がるモンスターの素材なんて高価に決まっている。

 いくら金が欲しいとはいえ、そんなことをしてしまったら俺は一躍有名になってしまう。最初は人知れず頑張る予定なんだ。細々と暮らすことだって想定内なんだよ。






「ついた。ついに、町へ着いたぞ……でも……」


 俺は町へ入るための門の前で一旦ストップしていた。


 このまま入ろうとは思ってるんだが、門のそばに門番が二人立っているんだよ。勝手がわからない俺は、ここをそのまま通り抜けていいものか悩んでいた。


 普通に通り過ぎても問題はないはずだが、通行証何て求められたら一巻の終わりだ。俺がそんなものを持っているわけもない。町へ入るだけなんだから何かを要求されることはないとは思うんだが、こんなしょうもないところで出鼻をくじかれては元も子もない。


「あ、あの人そのまま入って行ったぞ」


 様子見をしていると、おじさんが門番を気にすることもなく町の中へ入って行った。


 何だよ、心配して損したな。それじゃあ、この門番たちはモンスターが来た時のために立っているんだろうな。お勤めご苦労様です。


 おじさんの後に続き、俺もそのまま町へと入っていく。

 ここで挙動不審になったりしたら門番たちに話しかけられそうだし、気負わずに何も考えずに歩こう。

 俺は、何度も繰り返したことをするような雰囲気を漂わせ、町へ侵入していく。


 門をくぐると、町を歩く人、賑わっている屋台なんかが目に入った。


「何だよ、結構賑わってるじゃないか。モンスターの脅威なんて全然感じないな。俺もこの町にいれば安泰そうだな」


 もう普通のモンスターなら軽く倒すことができるであろう力を手に入れてしまっているが、もし何とかこの町にたどり着いていたら、きっとここでまったり暮らしていたんだろうな。ためにモンスターを討伐してコツコツレベルを上げる生活もよかったな。


「さてと、金を稼ぐ方法を調べないとな。飯を食うのにも、今日泊まる場所を確保するにも金は必要だしな。聞き込みとしゃれ込みますか」


 誰か話しかけやすそうな人を探して歩き回ることになった。

 俺はコミュ力には自信ないからな。人選は大事なんだよ。


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