ちょっと怖いんですけど
「お店はもう決めてたの? 良かったら私が二人を連れて行こうと思ってたお店でもいいかしら?」
「ウェリスお姉さんの奢りですからね。私は異存ありませんよ」
「そうね。私もウェリスさんのおすすめは気になるかも」
サクッと二人の了解を取っている。
当然ここで俺が一人反対する理由もない。奢ってもらえる上に、この町に詳しいウェリスがおすすめって言うほどの店に連れて行ってもらえるんだ。美味さ次第ではこれまでのことを水に流してやってもいいくらいだ。
「俺もそこ」
「決まりね。フフッ、念願の食事だわ。予約は……私が居れば顔パスでしょう。案内するから二人ははぐれないように私と手をつないだほうがいいわ」
俺の回答は聞いてないと。
言葉の途中にも関わらず、まったく意に介していないかのように被せてきやがった。これもう確信犯だろ。わざとやってるよなぁ。
「今、ダイサクさんが喋ってるのを無視したように感じたのは私の気のせいですか? いいんですよ、私の気のせいでしょうから」
すかさずミレネからのフォローが入る。
俺も感じた通りあまりにもあからさまだったんだろうな。いきなり約束を破っているに等しい行為をしてるんだもんな。
「そんなわけないわ。もちろんダイサクが賛成してくれてたのも聞いてたわよ。全員のオッケーが出たから嬉しくてちょっと反応が早くなっちゃったの。他意はないわ」
「ならいいんです。私もここでウェリスお姉さんを置いて行かないといけないのかと思って少し焦ってしまいました……今回は見逃しますが、次はないですからね」
にっこりと圧力をかける当たりがいつものミレネっぽいな。ミカに対してもウェリスに対してもこの対応は流石だよ。
「3人って相当仲良さそうに見えるんだが、まだミレネとミカが冒険者になって1か月程度なんだろう? もとからの知り合いなのか?」
「え? そんなに仲良しに見える? やっぱりダイサクはいいやつじゃない。見直したわ。でも、私が知り合ったのは二人が冒険者になってからよ。だから、付き合い自体はまだそんなにないわ。もう、心はつながってるから仲良く見えるのも無理ないわね」
「ウェリスお姉さんは私たちが初心者で右も左もわからないときに助けてもらってから仲良くなったんです。お世話になりっぱなしで申し訳ないくらいです」
「それくらいいいのよ。私は二人のことを近くで視界に映せるだけで幸せだから」
ウェリスは見た目が美人じゃなかったら捕まっててもおかしくないな。俺よりもむしろウェリスのほうが我慢できずに二人を襲いそうなまであるぞ。女に生まれて良かったな。
「ウェリスさんは数少ない高ランクの女性冒険者だからとても助かったわ。ウェリスさんが居なかったら私たちはまだ薬草を探し回ってたかもしれないもの」
「ミカまでいいのよ。私は二人と関われるだけで幸せだから。これからももっと頼ってくれていいのよ」
デフォルトでこの感じなのか? これは飯にいけるからテンションが上がっちゃってるだけだよな? いつもこの調子は流石にきついって。二人も流すのにも限界があるだろ。俺なんて会話に入るタイミングすらねぇよ。
「ダイサクさんがパーティーに加入してくれましたからウェリスお姉さんに頼ることは減ると思います。頑張って成長しますね」
「私だって今日はダイサクに守って貰ったけど、次は私がいいところ見せてやるわ」
「う、嘘でしょ……ダイサク、もしかして私から二人を奪うつもり?」
もはや殺気を放ってるだろ。俺のことモンスターとでも思って殺す気でいるだろ。顔が整ってると凄んだ顔が余計怖く見えるわ。すさまじい気迫だ。俺がゴブリンだったら一目散に逃げてるぞ。いや、レベルが低かったら人間だとしても逃げてるな。
「奪うなんて話にはならないだろ。頻度こそ減っても二人だってウェリスに頼るって言ってるじゃないか。パーティーだって別だし、そんなもんだろ」
「許せない。自分だってついさっき、加入したばかりのくせにぃ……」
「おーい、一旦落ち着けって。ここでお別れすることになりそうだぞ」
「いけないわ、私ったらこれからのお楽しみに比べたらこの程度我慢することなんて造作もないじゃない。悪かったわダイサク」
よくわからないがそれほど飯が楽しみなのかすぐに正気に戻ってくれた。
「危なかったですね。もう少しで置いて行こうかと思ってました」
「天使のミレネから笑顔でこんなことを言われる日が来るなんてね。大丈夫よ私。生きていればつらいこともあるわ。むしろ、ミレネから素っ気ない扱いを受けるなんてご褒美だわ」
口に出ている当たりがマジ半端ない。せめて、心の中だけで抑えてくれ頼むから。
しかし、ミレネは聞こえているだろうが別段変わった様子はないんだよな。そんなまさかウェリスはこれが普通なのか?
「ウェリスって二人と知り合って1か月なんだよな? ちょっと愛情が過剰過ぎないか?」
「二人が可愛いからよ……え? なによその顔、これ以上説明が必要かしら?」
間違いない、こいつは本物だ。




