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楽しい学園生活

「私はあなたが心配、それは本当よ?いざとなれば私が後ろ盾になって守ることだってできる」


人をナチュラルに見下した目をしているこの女、見た目こそ黒髪の似合う美形ではあるが、性格は完全に選民思想に飲まれていた。他人を守って正義面するのが気持ちいいらしい。


「俺はお前の行いについて反省しろだとかとやかく言うつもりはない」


「ただ、俺の邪魔をするなッ」―――



「あなたの買ってきたパン、私が頼んだのと違うじゃないの」―――


「いや、確かにチョココロネって聞いたんだが……」


「え?3組の分際で私に口答えするつもり?3組のよわよわ人間が私に逆らっちゃうんだ~?」

「やめなよ、めぐみほんとのこと言ったら可哀そうでしょ?晃威あきらい涙目になってるじゃない。そろそろやめてあげたら?」

「なんで?どうせ彼、絡んでくれる女子私らだけでしょう。話してくれるだけ感謝しなきゃ、ね?晃威?(あきらい)」


人通りの全くない閑散かんさんした場所にある教室の中で俺は女共に罵倒され嘲笑されていた。


チョココロネを俺に買いに行かせパシってきたこの女、皆田川みたなかわめぐみこいつは俺を完全に玩具おもちゃ扱いしてるドS性格最悪女。2組に在籍している生徒で見た目は美人かつ茶髪ゆるふわロングのお姉さんって感じだが性格はまるっきり正反対だ。


次に嘲笑混じりに可哀そうとか抜かしてるこの女は佐藤さとうアリス。名前の通りメルヘンチックななりをしておりショートヘアの可愛い系という外見に似つかない毒舌をかましてくれる。こいつも皆田川と同じ2組に在籍している。


この学園ではクラスが成績順で振り分けられており、最上位の1組と中間の2組、そして最底辺の3組に区別されている。この学園に入学できる時点で優秀なのだが、そんな優秀な生徒が集う学園といえども序列はあり、特に上のクラスの者は自身の自尊心が肥大化して傲慢な態度をとる者も少なくない。


こんなとんでもない学園に俺が在籍しているただ一つの理由、それは蔑まれ詰られ見下されることにある種の愉悦ゆえつを覚えるからである。ある意味、この環境は俺にとって天国といっても過言ではなかった。

この学園、成績や部活動で優秀な成績を修めるかつ、ある条件を満たせば2組や1組に昇格することも可能ではあるのだが、俺はそんなものに全く興味はなかった。


「………ッ」


いかん、いかん。喜んでるとバレてしまえば、奴らにいじられるのがご褒美だと悟られてしまう。なので俺は精一杯眉間にしわを寄せて険しい表情をつくってみせた。なるべく屈辱的な表情に見えるように善処した。その刹那せつな―――


―――無言で女共を睨みつけるのと同時に教室の扉が開いた。


「何してるの?こんな場所で」


清涼感のある爽やかな声のほうに目を向けると、黒髪のロングヘア―で長身の女性が立っていた。


冷泉れいぜい静香しずかさん!?」

先ほど俺をなじっていた女の一人がひどく慌てた様子で名前を呼んでいた。

そうこの冷泉れいぜい静香しずかは新入生代表を務めた超エリートで1組のリーダー的存在である。

そして底辺の俺とは大違いの幼馴染でもある。


「あなた達、確か2組の生徒よね?」


1組の超エリートが放つ言葉に2組の女共はたじろぐしかなかった。静香の放つ威圧感にただただ圧倒されていた。

(あ~あ、折角いいところだったのに。まだまだ詰られ足りない)

全く間が悪い。最悪。


晃威あきらい明人あきと君、様子が変だけど大丈夫?ここで何かあったの?」


「いいえ、何もありませんでした。ただ、一緒に昼食を食べていただけです。」

他人行儀に応答して見せる


「そう……、ならいいわ。失礼。」


そう言って静香は教室を後にした。


「なんか興ざめって感じね、行きましょうアリス」

皆田川はそういうと佐藤と一緒にこちらには目もくれず教室を出て行ってしまった。


(全く何なんだ。静香のやつ……)


静香のせいで渾身の俺の罵倒されて喜んでいると悟られないための表情演技が無駄になってしまった。

そもそもなぜこの誰も通らないような場所にある教室を静香は開けたのだろうか?

俺を助けるため?……まさかなあの静香があり得ない。



そんなことを考えていると授業が始まりそうなので俺も教室を後にした。


「ごめんな明人あきと


突然後ろから申し訳なさそうにしながら控えめな声が聞こえたので振り返ると

友人の田沼たぬまみなとの姿があった。


「全然、気にするなよ」

笑顔でそう応えた。実は俺が空き教室でパシリをされていた理由はみなとが絡まれていたところを俺が割って入っていったからだ。もちろん善意などではない。


ただシンプルに助けたほうが俺としては都合が良かったからである。

罵倒されることに喜びを覚える俺としてはまたとない機会だった。


あともう一つ理由として、田沼の罪悪感をくすぐることができると思ったからでもある。

罪悪感は人間を動かす上でかなりの原動力になり得る。田沼は俺に恩と罪悪感を感じているため、これから何か俺にとって不都合な問題が起きた場合に都合が良いと考えからだ。


みなとは俺の唯一の友達だからな。助けるのは当然だろ?困ったらまたいつでも言ってくれ」


明人あきと……ああ!ありがとう!」


これから楽しい学園生活が始まりそうだ。




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