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ある侍女のつぶやき

私は バールトン侯爵家の三女として生まれ、物心ついた時からどこに出されても恥ずかしくない子としてずっといい子で育って来ました。

優しい姉二人と兄二人両親にとても可愛がられて育ちました。

あの頃は本当に悩みなんて一つもなかったように思います。

しかし、小学校入学の前に神殿に行った時に私には呪いが掛けられている事を知ってしまいました。


呪いは誰に掛けられたのか分からなくて、神官たちも解除しようと試みましたが

解除する事が出来ないと言われてしまったのです。

何年も、遠方の魔術師、山の中の占い師、色々な人の元へ身元を隠して連れていかれましたが、結局無駄足に終わりました。

両親も随分悩んだようでした。


一見、何も害が無い呪いなのです。

実際長寿を全うできると神官様にも言われて両親は安堵していました。

この呪い、一生五体満足で、怪我をするでもなく、病気になる事も無く、何も困る事は無いのです。


ただ、子供を残す事だけが出来ないと、言われました。


侯爵家は、兄が二人居りますし跡取りには困らないです

姉二人も特に何の問題も無く、社交の場に出て活躍をされていますので侯爵家としては何も問題が無いのです。


私は居なかった子供として扱われるようになりました。

家の中で普通に接してくれるのは、乳母と下働きの人たちだけでした。

いえ、多分みんな本当は普通に接してくれていたのだとは思うのです。

ただ、あの日鑑定を受けてから、私の受け止め方が捻くれてしまったのです。


全ての事を、なにか裏があるのではないかと疑うようになり

褒められても、皮肉なのではないかと考えるようになって生きてきました。

何回縁談の話が来ても、子を産めないのだからきっと放り出されると決めつけて、私は生涯独身で過ごすと決めて生きてきました。

社交のシーズンになっても自分からは決して参加しようとせず、痺れを切らせた姉達に引きずられるように、パーティーに参加しても、壁の花に徹して、決して誰とも話もしようとしませんでした。


執事に紹介状を書いてもらい、王宮のメイドの面接をこっそりと受けた時には、お父様にがっかりされてしまいましたが、「お父様も王宮で役人として働いているではありませんか」と、屁理屈で返し王宮に住み込みで仕事と生活をする事が出来たのです。


王宮での仕事は肌に合っていた様で、毎日が楽しく、傍からは苦労しているように見えるようで度々

「辛い仕事を頑張っていて偉いわね」

と言われましたが、私は楽しくて楽しくて仕方がなかったのです。


それに、ここに居ると縁談の話も回って来ませんし、男性から声を掛けられる心配もなかったので、心穏やかに過ごす事が出来たのです。


19歳になった時に大抜擢があり、なんと王妃様の部屋のメイドになる事が出来ました。

こんなうれしい事は他になく、王妃様に毎日のように声を掛けて頂き、大切に可愛がって頂いていました。

そして3年経ち、王妃様のボディーガードとして、毒見役として、予定の調整係として、アイシャの他には真似出来る人間がいないとまで言われるほどの、メイドになったのです。


そんなある日、王妃様が初めて見る程の満面の笑顔で、私に言ったのです。

「あなたに特別な使命を与えます」

「この国に聖女が誕生します。 いえ、非公式ながら誕生しました、あなたは私の一番お気に入りです。聖女の専属のメイドとして、聖女に不自由を掛けない様にしっかりと支えてください。」


そんな指令を王妃様から直接言われたのでした。

一体どんな方なのでしょうか、王妃様のように慈愛に満ちた方であれば嬉しいのですが・・・


それからおよそ一週間後、突如その方はやっていらっしゃいました。

四日後にお披露目会を行います、その日の夕方にお越しになります。そう伝えられました。

空き部屋数部屋が改装されて、聖女専用の部屋に作り替えられていました。

私達はみんなで協力して家具・調度品の用意をして何とか、聖女様のいらっしゃる2時間ほど前にはお迎えする用意が整いました。


当日、「内門までお越しになられています早くお出迎えして下さい」そんな伝令を受けて王宮の門の辺りまでお迎えに上がると、内務大臣のマルコム・ヴィヴィンティヨ様と一緒に居るようでしたが、マルコムさんはドナルド・マルポンポン侯爵と一緒にどこかへ行ってしまったので、残された3人の方たちを私は、王宮の新しくしつらえたお部屋に案内させていただきました。


黒髪に黒い瞳、山の中の集落ヴァヴィンチョの出身だと言う、何か不思議な雰囲気を纏った方でした。

只の山奥で育った人とは、なにか醸し出すものが違いますし、教養はかなり高く貴族ともまともに渡り合えそうです。

 しかし、その一方で立ち姿などは平民そのものですし、恐らくカーテシーも分かっていない様子

足音もそこそこに響かせています


この後、王様と会うので

 恐ろしいほどに付け焼刃ですが、お辞儀の角度など、最低限の事をお伝えしました。

そして、謁見の間の見取り図を見せて、兎に角儀式には影響が無いように、お伝えする事もギリギリまで絞りました。


意外なほどに、物覚えが良い3人でお伝えした事はその場でそこそこキッチリと覚えてくださいました。

この人たち、頭が良いんだ。

久しぶりに王宮以外の男性を見た事が新鮮なのか、私はなぜかこの男性を見る時に頬が緩んでいる気がしました。気を引き締めないとと自分を鼓舞します。


なんにしても、ちゃんと儀式が行われることを祈って、私は2日ぶりの食事と仮眠に入りました。

2時間程仮眠をとると、なんとハプニングがあって聖女様たちは部屋に戻って食事をすると聞かされました。


「へっ部屋へ案内しないと・・・」私は慌てて言うと

「既に案内に向かっているので大丈夫です」と返されました。


それからは、食事を運んだりかなりバタバタしていました。

そして、お風呂へ皆さんを案内しようとした時に聖女様が


「あの、アイシャさんは恋人とかいらっしゃるのですか?」


と、聞いてこられました、突然の事だったので


「い・・・いえ、あのそのような方はおりません」


と言ってしまいましたすると、あの方が突然私の前で、膝をついて


「こんな時に恐縮ですが、私をアイシャ様のお相手に立候補させて頂けませんでしょうか」


と言って来ました。

私は驚き、頭の中が混乱しかけましたが、すぐに気を取り直しました。

いけない、私は聖女様専属の気高いメイドです。


「すみません、仕事中ですので・・・ それでは皆様を浴場へご案内させて頂きます」


私は、表情を引き締めて皆様を湯殿へと案内するのでした。

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この小説に登場する侍女アイシャの物語を掲載しています。 バールトン侯爵家は今日も楽しく暮らしています。
https://ncode.syosetu.com/n7281hz
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