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お腹いっぱい

控室での食事は、とてもリラックス出来ました。

たぶんビジュアル的には、広い会場のひな壇の上の方が華やかなのですけどね。


食事の会場では、みんなの注目を浴びていたので、全く食事の味を楽しむどころではなかったのです。

「ああ、やっぱりこの三人での食事の方が落ち着きますね」

私がつぶやくように口を開くと


「そうだね、遠くから見ていても緊張してるのが良く分かったもの」

ウィリアムがそんな事を言いました。


「それにしても、あの倒れた子爵は相当無理をしていた感じだったね、しばらくは寝かしておかないとだなっておもったんだけどね。」

レオナルド先生が言いました。


「本当に、まさかみんなの前で治しちゃうとは思わなかったよ、今回はちゃんと治そうとしてやっていたようだったね。」

ウィリアムが言うと私は頷きながら


「そう、まぁちょっと元気になってくれたら良いかなって位だったんだけど、思ったよりも効果があったみたいですね。」

と答えました。


「毎日応接室で練習した成果が出ましたね、明日以降の状況を医者としては知りたいなぁ」

レオナルド先生は言いました。


そう思いますよねやっぱり。


「私も自分の流した魔法の効果がどれ位続くのか気になります。」

私もそう言いました。


暫く食事を楽しみながら、そんな話をしていたらいつの間にか、食事は全て終わっていて


アイシャさんが、食後のロイヤルミルクティーとコーヒーを用意してくださいました。

「おいしい・・・こんな風に紅茶を淹れられるのは素晴らしいと思います、羨ましいです。」


そう言うとアイシャさんが答えてくださいます。


「淑女教育の中で、美味しいお茶の入れ方がありますから、カオリ様も時期にお茶の淹れ方を勉強する機会があるはずですよ、その時にはウィリアム様が毒見係として美味しく淹れられるように訓練にお付き合いくださいませ」


そう言うアイシャさんはとても可愛らしく笑われました。


「ど・・・毒見ですか?」


ウィリアムが、おじけづいたような感じで答えました。


「ええ、最初のうちは、なかなか美味しく淹れられませんので、私も12才くらいの頃、お父様に毎日渾身の出来栄えだと思ったお茶を飲んで頂きました、大人になってからあの時は地獄のようだったと聞かされました。」

アイシャさんは可愛らしい声で笑いながらお話されました。


「アイシャさんは、お食事は召し上がられているのですか?」

アイシャさんが休む間もなく仕事をしているように見えるので聞いてみると


「はい、皆さまが謁見の間に行かれている間にパクパクッと食べて来ましたよ」

なんておっしゃるので、驚いてしまいました。


「ええ、侯爵令嬢がパクパクッと食事をされてしまうのですか?貴族の方はなんていうか優雅にお食事をされるのだと思っているので、驚きです。」


そう答えると、アイシャさんが「おほほほほほほほほほほ」と笑い始めました。

鈴を転がすよう可愛らしい笑い声で、それだけで魅了魔法にかかりそうです。


しばらく笑い続けたアイシャさんでしたが、気を取り直したように


「貴族は、表面的には優雅に見えますけれど、本当は平民以上に忙しいと思いますよ。」


にっこりと笑いながら話を続けます。


「どんなに忙しくても優雅に見えなければ貴族失格ですから、例えばうちの実家ですが領地からの報告書が集まる時期になるとそれこそ数日眠らずに書類を確認し資料を集め、指示を出す事になります」


私の目をじっと見つめて、さらに続けます。


「その時期は文字通り数日間食事をしない時もあります。」

私が頷くのを見ると、話を続けてくれました。


「もし、自分の領主が不健康そうだったり、酷くみすぼらしかったら、領民は自分の領地に誇りを持てなくなるでしょう、だから常に優雅に見えるように心掛けているのです。」


笑顔でそんな話をして、普通の表情に戻ったアイシャさんが、お話を続けます。


「むしろ、ここで働いている方が規則正しい生活になりますし、公爵家の執務をしているよりも健康的かもしれませんね。それは公爵家で働くメイドたちにも同じことが言えると思います」


私は驚きでした。

「そうなんですかぁ、本当に知らない事ばかりですね。しかし、私に貴族のような作法をちゃんと学べるのかとても不安ですわ」


アイシャさんはまたまた鈴を転がしたような声でわらいながら


「絶対に大丈夫ですよ、安心して過ごしてください。のちほど湯浴みの用意が出来ましたら参ります」


そう言うと、下げ終わった食器の乗ったワゴンを押して部屋を出て行かれました。

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この小説に登場する侍女アイシャの物語を掲載しています。 バールトン侯爵家は今日も楽しく暮らしています。
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