勧善懲悪物語?
いつも、読んでくださってありがとうございます。
傍聴席も埋まって、扉が締められると直ぐに
裁判官が入って来て「それでは、始めます」と宣誓された。
前回はマムシヴェルズ伯爵の独壇場でした
またもやマムシヴェルズ伯爵が最初に口を開こうとした時に
裁判長が「発言は必ず挙手の上、許可を得てから行う事、守ってくださいね」とくぎを刺されました。
おお、今回はちょっと雰囲気が違うぞって、期待に胸を膨らませました。
裁判長は続けて「弁護人アルベルト・モーガン 意見があるそうだが」とアルに発言を促しました。
アルは落ち着いた様子で立ち上がると
「はい、今回の裁判の根拠となる特許についてですが、特許の申請された日が、依頼人の工場稼働の為に募集した人員に仕事の内容を教育した後の日付となっています。
そして、特許の内容を精査した所、当方の工員に教育している内容を、そのまま記載されているのであります
」
マムシヴェルズ伯爵側のドデーモ・スティール男爵が挙手をする
「ドデーモ・スティール君」裁判長が発言を許可すると
「その者達は、当方の研究内容を盗み出し、工場を準備しておりました。
よって、特許の内容と工員への教育内容が同一なのはおかしくありません」
アルが挙手をして、発言の許可を貰う
「それでは、電球のフィラメントに使用される 繊維は、ベゴロン木綿を指定している根拠を言ってください、開発には随分と苦労されたのでしょうから、もちろん淀みなく言う事が出来ますよね」
裁判長が、伯爵の方を見ると、マムシヴェルズ伯爵は挙手をしていなかった。
「ドデーモ・スティール君」 と裁判長が声を掛ける
「はい、これは開発の中でも非常に重要な秘匿情報ですので、公にする事は出来ません」
アルはニヤリとした顔になって、挙手をする
裁判長が許可を出した
「特許を申請したという事は、既に 公にしているではありませんか、
秘匿したいのであれば、特許などとらなければ良いのです」
裁判長が、伯爵の方を見ると伯爵は、怒りで顔が赤くなっている。
ドデーモ・スティールが挙手をする
「特許は取っているので、既に公になっているが、 ベゴロン木綿の採用に行きついた工程まで公にする必要はない」
アルがすかさず、挙手をするので、裁判長が許可を出す
「聞き直しますが、特許の内容に、間違いはないですか?」
ドデーモ・スティールが挙手をしてから
「何が言いたいのだ? 特許を侵害しているから 訴えられているのだぞ」
と言い放った。
アルが挙手をし許可を得る
「分かりました。
それでは、とても重要な事実をお伝えします。
当方で工員にはベゴロン木綿を使用していると教育しておりますが
実際には、オニャン木綿をペコリンの液に付け込んだ物から製造しております。
これは、情報漏洩を防ぐためにわざわざ ベゴロン木綿を使用していると、嘘を教えております
そしてベゴロン木綿を材料に選んだ場合、製品の寿命は7日から10日ほどになると言う実験の結果がありますので、提出いたします」
と言いながら、職員に封筒から出した書類を手渡す。
「次に 乾電池についてもですが、乾電池の材料として、マンガンを糊で固めると記載されておりますが
こちらも、工場では二酸化マンガンを使用しています」
「上水道の部品にも、水洗トイレの製造の特許にも、それぞれ工員に教えている内容と、実際に使用されている原料は異なりますが、特許の内容を見ると、工員に教えている物になっております
これは工員としてわが社へ侵入して、その内容で特許を取ったと言わざる得ないと思うのですが、いかがでしょうか?」
マムシヴェルズ伯爵の方は顔を真っ赤にしているままで、発言しようとしていない。
裁判長は、「マムシヴェルズ伯爵、返答はありませんか?」と聞く
返答する様子の無いマムシヴェルズ伯爵に、裁判長はやれやれと言った様子で
「それでは、裁決に入ってもよろしいでしょうか?」
と聞く
マムシヴェルズ伯爵がおもむろに立ち上がり「人の研究を横取りした平民が、何を偉そうな事を言っているんだ」と怒鳴りました。
「静粛に」裁判長が注意する
どうやら、マムシヴェルズ伯爵に反論する材料はなさそうだ。
「それでは、特に反論もなさそうですし、このまま裁決に入りますので、30分休廷します」
と言って、一旦休みになった。
私は、マムシヴェルズ伯爵が何も言い返せなかった事に、驚いてしまった。




