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良い人達と強い人達

優しい夕食のおかげで、昨夜はしっかりと眠る事が出来ました。


朝食はフルーツの盛り合わせとヨーグルトに暖かいポタージュスープ

大事な裁判の前なので、消化の良いメニューにしてくださいました。


今日はこの辺の平民の服装という事で、先日買ってもらった服を着ました。

レオナルド先生は、お仕着せが良かったとしきりに呟いていましたが、聞かなかった事にしておきましょう。


先生、早く素敵なお相手を見つけてくださいねと、心の中でつぶやくのでした。

アルは対抗策の為に隣の領地に行って、人と会っているので、ギリギリに到着するから

何があっても、絶対に口を開かないで、待っていてくださいと言う伝言が届けられました。


私達は、メイドさんから地図を渡され、

ウィリアムとレオナルド先生は、ヴァヴィンチョの服装で出発しました。


私は、お屋敷から出なかったので、初めて街中を歩きました。

ほんの20分程歩いただけで、裁判の行われる会場に着きました。


傍聴人が既に結構詰めかけていて、私達は追い立てられるようにして会場に入りました。

会場に入ると、まるで罪人を見るかのような雰囲気になっていました。

過半数が貴族のようでした。


私達は、会場の真ん中に立たされました。

暫くすると、いかにもという雰囲気の貴族数人が、傍にある机と椅子のある方へやって来ました。


最後に鬘をかぶった人が、一段高い席にやって来て着座しました。

「さて、みなさん集まられましたな」

しかし、まだアルも領主様も誰も来ていません、ウィリアムが「まだ揃っていません」と言うと


「平民が口をきけると思うな、次に勝手に口を開いたら、問答無用で拘留するぞ」と一括されてしまいました。


「被告人、ウィリアム・レオナルド・カオリ お前たちは、アーノルド・マムシヴェルズ伯爵が発明をし特許を取得した電球を無断で製造し莫大な利益を得ていた事を認めるか」


「「「認めません」」」三人同時に返答した


「被告人、勝手に返事をするな、挙手をして、裁判長(わたし)の許可を得てからだ」と裁判長が言う

「挙手の意味が理解できるのか、この平民共に」マムシヴェルズ伯爵が手も上げずに言う。

「特許も理解できぬと見える、人間以下の動物どもだ」隣にいた男性がまるで汚い物でも見るかのように続けて言う


ウィリアムとレオナルド先生が手を挙げる、私も手を挙げるけれど、お屋敷を出てからずっと座っていないので、椅子が欲しかったりする。


しかし、手を挙げているのにもかかわらず、裁判長にも無視されてアーノルド・マムシヴェルズ伯爵は話し続ける。

「全く、盗人猛々しいとは言いますが、私の発明した物を、勝手に盗み出し、工場まで作り量産をしておりました。 名声を得たかったのか、それとも金を得たかったのかも含めて、さらに何か隠し事がないのかこの者どもには厳しい拷問をして、しっかりと、聞きだすべきだと思います」 とマムシヴェルズ伯爵が言う


この人は勝手に発言しても良いのだろうか?

と訝しげに見るが、目が合ったのにも関わらず、どこ吹く風といった様子。


その隣で、私達がずっと手を挙げているのだから、いい加減に、発言させてくれよって思っているのだけれども、まだ、マムシヴェルズ伯爵陣営の話する番のようで、全く発言させて貰えていないのです。


伯爵の隣の男が、話し始めました。

「この者どもは、電球のみならず、乾電池までも我々の特許を無断で使用しているのです。

更に、工場に踏み入って分かったのですが、水洗式便所と浄化槽という設備までも

私達の特許を無断で使用して製造していました。

信じがたい光景でした、まったく恐ろしい盗人です」


「そんなはずあるか」ついにウィリアムが、叫んでしまいました。


「その平民を投獄せよ」 あっという間にウィリアムは捕まって連れて行かれてしまいました。


なんで、アルが居ないの・・・弁護士のアルも、執事のヨッシーも、領主のマルポンポン侯爵様も

今、私達3人を守ってくれる人が一人もいないのです。


その時、外が騒めいているのが聞こえました。

そして、扉が叩かれました。

「誰だ、騒がしい」 伯爵が怒鳴ると

「勝手に発言をするなと申しておるだろうが」と裁判長


扉が少し開いて、誰かと話をしているようです。

話を聞いた男の人が、静かに裁判長の方へ歩いて行き、裁判長に耳打ちをしました。


「弁護人アルベルト・モーガン 遅刻は原則認められないぞ、次からは絶対に入室させないからな」 裁判長は扉の向こうに届くような大きな声で言いました。


アルが、2人の男性と執事のヨッシーとマルポンポン侯爵を連れて入って来ました。

アルを除いた3人が着座すると、アルが手を挙げて裁判長が頷くと発言しました。


「大変遅くなりました。 ウィリアム・レオナルド・カオリの弁護人の アルベルト・モーガンになります、入室早々ですが、カオリは妊娠中になりますので、出来るだけ楽な状態にして欲しいと存じます、二人に椅子を用意いただけませんでしょうか、それからなぜウィリアムの姿が見当たらないのでしょうか?」


「あの者は、発言の機会を与えられぬうちに、話を遮って発言しようとしたのだ」

と、マムシヴェルズ伯爵が発言する。


アルは手を挙げて裁判長の方を見ると、裁判長は小さく頷いた


「マムシヴェルズ伯爵、あなたも今、発言の機会を与えられていないにもかかわらず、発言をしていましたね」アルが静かに言う


「揚げ足取りだ」と、マムシヴェルズ伯爵は大声で言い返す。

またアルは手を挙げて裁判長の方を見る、

「マムシヴェルズ伯爵、発言する際には、挙手の上許可を得てからにしてください、あなたもここから出さなければ行けなくなりますよ」

伯爵は、さらに何かを言おうとしたようでしたが、隣の男に耳打ちをされてから、苦虫を噛み潰したような顔をして黙り込み着座した。


アルがさらに挙手をして裁判長を見る

「さて、手元の資料を見るに、なにやら罪状が増えているように見受けられますが、これはいったいどういう事でしょうか?

電球の特許侵害での製造差し止めと売り上げの没収という裁判だったと思うのですが、乾電池・上水道・水洗便所・浄化槽の特許侵害及び製造差し止めですか、いやはや、不思議ですなぁ

私は、工場にも実験設備にも入りましたが、少なくとも何か月も実験を繰り返し、これらの設備を開発したその失敗作を含めていくつもの実験を経て改良されてきたものを、説明を受けましたし見てきました。改良される前の物も、無数に残っていました。

しかしです、特許の出願された日時がとにかくおかしいですねぇ、新規に雇い入れた工員が訓練を終えた後になっています。 もしも、特許を侵害して製造を始めたのならば、工場を作るよりも前に、少なくとも工員を募集するよりも前には特許が出願されている筈では無いでしょうか?」


またも伯爵は挙手もせずに

「言いがかりは、やめろ 我々はちゃんと特許を取っている、お前たちが特許を侵害しているんだから、覚悟しろ」と怒鳴り

隣の男が、慌てて挙手をしながら、反対の手で伯爵の袖を引っ張っている。

裁判長は、顔をしかめながら、マムシヴェルズ伯爵の隣の男に発言を促す。


「マムシヴェルズ伯爵の弁護人のドデーモ・スティール男爵だ、

マムシヴェルズ伯爵が言う通り、我々は正式な書類と審査を経て特許を取得している、おかしな言いがかりをつけてもらっては困るね、まぁ山奥の平民を弁護するには、多少の詭弁が必要なのだろうがな、開発者は伯爵なのだよ、学の無い平民とは違うのだ、根本的な所から間違っているのだよ君たちは」


それから、延々と、平民と貴族は違うと言う、あたりまえの事を話続けられて、時間が無くなってしまった。

裁判長が「本日はここまで、次回は4日後ここの会場で」と言うと、一斉に傍聴人たちが立ち上がって、帰り支度を始めた。


連れていかれてしまったウィリアムは、地下の牢に入れられていた。

アルが、裁判長に話を付けに行ったのだが、明日までは牢に入れられることになってしまった。


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この小説に登場する侍女アイシャの物語を掲載しています。 バールトン侯爵家は今日も楽しく暮らしています。
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