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どうも、強化人間です

ロボット物のオリジナル小説少ないな〜と思って執筆しました。

書いてみてなぜ少ないか分かった。

とんでもなく難しいよこれ!!

頭の中の想像の30%も形にできてない。

そんな駄文ですが楽しんで貰えたら幸いです。

 転生したら、強化人間でした。

 強化人間、またはブーステッドマン、まぁ呼び方はどちらでもいい。

 それは人体が元々備えている成長プロセス以外の人工的な手段によって能力を強化された人間の事を指す。(Wiki調べ)

 人間本来の設計図に従わず、目的にあった形に歪まされ、人外の能力を植え付けられた人間。

 生まれ変わったと思ったら、自身がそんなものになっていたのだから驚きだ。

 強化人間って……ガ○ダムかよ…………

 ……まぁ、前世の記憶がある時点でも驚きなんだけどさ。




 私が前世の記憶を取り戻したのは、強化人間として脳を改造する実験の最中、まさに脳を弄られているタイミングだった。

 度重なる実験により朦朧とした意識の中、私は頭に何か違和感を覚えた。

 急に、五感が鈍くなり………脳が、ぐらぐらと揺れる。

 実際は私の頭は器具で固定をされていたので、揺れるわけがないのだが………とにかくそう感じたのだ。

 何か………頭の中で何かが、破れるような感じがした。

 そして、膨大な情報が頭の中に流れ込んできたのだ。

 それは記憶だった。

 自分が何者で、何をしていたのか。

 自分ではない、自分の記憶。

 その記憶に自己が飲み込まれていくのを感じた。

 その不快な感覚に私は混乱し、絶叫して暴れた。

 だが、当然のように身体は拘束されていて、身動きも取れない。

 ただ、ただ泣き叫ぶことしかできなかった。

 結局、私はそのまま気を失ってしまったらしい。

 次に目が覚めた時は、もう何もかも終わっていた。

 頬を叩かれ、意識の有無を確認される。


「痛い」


 そう答えると、研究員たちは驚いたように後ずさった。

 指を突き出され、それが何本かという質問をされる。

 私はそんなことよりも汗をかいて気持ちが悪いので、シャワーを浴びたいと答えた。

 それを聞いた研究員たちは、飛び上がって「成功だ!」と騒ぎ始めた。

 訳が分からずに、周りを見渡すと、そこには私と同じように拘束され、頭に機械を取り付けられている子供が何人もいた。

 だが、その誰もが、眼球をぎょろつかせながらブツブツと独り言を言い続けていたり、奇声を発していたりと正気を失っていた。

 どうやら、この部屋にいる子供全員が私と同じ境遇のようだ。

 そこでようやく、私は自分の状況を理解した。

 自分は、人体実験の被験者であり、この中で唯一の成功例なのだと。




 それからはとんとん拍子にことが進んだ。

 一通りのテストを受け、私の性能に満足した研究者たちは私に名を与え、軍へ入隊させた。

 軍……えっと………この身体、まだ子供だと思うのですが………戦うの?

 軍隊に配属した私には一機のロボットが与えられた。

 駆動騎兵、という人型兵器らしい。

 あのぉ………このロボットに乗る感じですか?


 あ、はいそうですか…………





―――――――――――――――――――――――――――――――





 私が軍に入隊してから1年の月日が経った。

 私はあれから強化人間としての職務を全うし、日々戦っている。

 正直、人と戦え、と言われていたら逃げ出していたのだが………幸いなことに私たちの敵は同じ人間ではなかった。

 機械生命『屍械(シカイ)』それが私たちの敵だ。

 私の生まれたこの世界は数十年前、突如現れた屍械によって蹂躙された。

 それはまさに地獄絵図と呼ぶにふさわしいものだったそうだ。

 文明は崩壊し、多くの人間が死に絶えた。

 屍械のヤバさはその学習能力にある。

 やつらは生物の脳を喰らい、その中の情報を学習することができるのだ。

 人類の叡智は瞬く間に吸収され、進化した屍械により地上は火の海と化した。

 人間を学習した屍械には既存の兵器は通用せず、人類は敗走したのだ。

 人類は屍械の手の届かない海に逃げるしかなかった。

 屍械は何故か海を嫌っており、海までは追ってこなかったからだ。

 そこで人々は海上に都市を建設し、国家を再建することにしたのだ。

 それが今私の暮らす、海上国家、碧斗であり、守るべき今世の故郷だ。

 私は軍人として今日も屍械から人類を守っているというわけだ。


 …………………………………………


 ……正直……もうやめたいんだけどね。


 ……………………………


 …………………


 ……


 朝。

 いつもと同じ起床時間。

 いつものように私は自然と目を覚ました。

 もう、見慣れてしまった天井。

 そこから目を離してベッドから起き上がり、軽くストレッチをして体をほぐす。

 その後、シャワーを浴び、朝食をとる、いつもの流れだ。

 朝食は軍から支給された、カロリーバー。

 別に食堂に行けば温かくて美味しい食事を食べられる。

 でも。私には食堂に行きたくない理由があった。

 部屋にある鏡を覗き込む。

 そこに映るのは、十代後半くらいの少女の姿。

 そう、少女である。

 名前は月宮來羽(ツキミヤクレハ)、16歳、職業軍人。

 前世では二十代のおっさんだったはずなのに、今では何故か可憐な少女なのである。

 解せぬ。

 無表情で、死んだ目をした黒髪ロングヘアーの少女。

 これが今世の私に与えられた体なのだ。

 度重なる実験の弊害なのか、それとも生まれつきか、私の顔はいつも無表情で表情筋を動かすことができない。

 おまけに言葉も、何故か思ったように喋れず、機械音声のような無機質な声になってしまう。

 おかげで、私のコミュニケーション能力が著しく低い。

 初めて会った人にはよく怖がられる。

 明らかに未成年の訳ありパイロット、そんな人間が目立たない訳がない。

 食堂に行くと、他の隊員たちにも避けられるし……奇異の目で見られる………

 一度それで怖い思いもした。

 とにかく居心地が悪い。

 だから私は、こうして一人で食事をしているのだ。

 別に寂しくはない。

 寂しくないったらない!

 現実逃避気味にカロリーバーをがじがじと齧る。

 味は正直……おいしくない。

 でも、栄養満点で、これだけでバランスも取れた完全食なのである。

 問題ないもん!(涙)

 食事を終えたら、待機時間だ。

 私は正規の軍人ではないので、書類仕事などの雑務はない。

 私は兵器であり、戦うことが仕事なのだ。

 ……………本当にどうかしていると思う。

 十代の少女がやることじゃないって。

 最近、本気で軍の脱退を考えている。

 もちろん、実験兵器の私に人権はないので逃げ出せば射殺だろう。

 なので正規の方法を模索しているのだ。

 近頃は怪我をすれば前線から離れることができるのではないかと思い、わざと負傷しようと無茶な特攻を繰り返したりしている。

 でも、いざ攻撃が当たりそうになると、怖くなって避けてしまうんだよね。

 うぬぬ………チキンハートな自分が憎い。

 私が頭を抱えていると、襲撃を知らせる警報が鳴った。

 どうやら、お勤めの時間らしい。

 急いで格納庫へと向かう。

 格納庫に着くと、整備士たちが私の機体の整備を急ピッチで進めていた。

 駆動騎兵 黒鉄(クロガネ)、私の専用機体だ。

 機体を覆う羽のような黒い装甲、その隙間から覗く銀色のフレーム、頭部には赤い単眼カメラアイが光っている。

 尖った装甲のせいか刺々しい印象で、とてもカッコいい。

 黒は私の好みで塗装してもらった。

 黒い機体………いいよね、中二心をくすぐるよね。


「ねぇ……私の黒………まだ………?」


 機体の整備状況を聞きたかっただけなのに、こんなセリフになってしまった。

 つくづくこの体は不便だ。

 思ったように喋ってくれない。

 これでは急かしているみたいじゃないか。


「は、はい!すぐに終わります」


 ほら、整備士が慌てたように作業を進めてしまった。

 私の命綱なのだから、適当に整備して欲しくはないんだけどなぁ………

 ごめんなさい、悪いのはちゃんと喋ってくれないこの体です。

 申し訳なさを感じつつ、作業を見守る。

 整備士さんたちの汗がすごいんだけど?

 私どれだけ怖がられているの??


「黒鉄、出れます!」


 数分後、準備が完了した。

 コックピットへと乗り込み、出撃前の最終チェックを行う。

 モニターに映し出された自分の顔を見て思う。

 確かに、この目は怖いよな………怖がられるのも当然かも。

 感情がない人形みたいな目だ。

 出撃前に1人落ち込んでいると、司令室と回線が繋がる。

 映像データと共に今回の作戦概要が伝えられる。

 と言っても、私のやることはいつもと変わらない。

 突っ込んで、パパッと撃墜して終わり。

 出撃許可が下りたので、カタパルトに機体を固定する。

 ロボット物定番のカタパルト発射だ。

 男ならばロボットの出撃シークエンスで胸を熱くしたことがあるはずだろう。

 私もその口である。

 少年時代に自分ならどういう台詞を言うとか、あれこれ妄想したものだ。

 この体は自由に喋れないので、あの日の妄想は叶わないけど、それでも出撃時はテンションが上がるなぁ。


「………月宮來羽…黒鉄………出る…!」


 出撃宣言と共にレバーを倒す。

 黒い機体が、空を舞った。




 ***


 戦場に着くと、そこには大量の屍械がいた。

 屍械にはさまざまなタイプが存在する。

 二足歩行の巨人型、四足歩行の獣型、空を飛ぶ鳥型など、屍械は目的に合わせその身体を進化させてきた。

 屍械は海を嫌うため飛行能力がない屍械は海上には現れない、そのため私たちの相手は必然的に鳥型に絞られる。

 銀色の胴体に、青い複眼をした巨大な鳥型の機械生物。

 その体内には卵が格納されている。

 鳥型は屍械の生息域の拡大を担う個体であり、卵には様々なタイプの屍械の幼体が収納されている。

 卵は産み落とされると同時に孵化し、周りのものを喰らいながら成体の屍械へと成長するのだ。

 つまり、海上都市までたどり着かれて卵を産み落とされたらジ・エンドってわけ。

 そうなる前に撃墜する、それが私の仕事だ。


「おい、黒いのっ!前に出過ぎだ、下がれっ!!」


 友軍からの回線が入る。

 最近私の無茶な突撃に思うことがあるのか、文句を言われるようになった。

 私が突出することで、屍械を引きつけ友軍の被弾率を減らしているはずなのだが………

 いったいどこに文句があるんだか。


「………問題ない」


 機械制御を全て切り、操縦をマニュアルに切り替え加速する。

 屍械が何かする前にトリガーを引き、敵機を撃ち抜く。

 私の放った弾丸が過たず屍械へと命中し、その身体へ風穴を開けた。

 敵も黙ってはいない。

 こちらに向かって一斉に捕食触手を伸ばしてきた。

 機体腰部の装甲を展開する。

 装甲が開くことにより生じた空気抵抗、それにより機体がわずかに傾く。

 そのわずかな傾きが、敵の攻撃の軌道から機体を逸らさせる。

 触手は空を切り、狙いを外した。

 そのまま、機体のスラスターを全開にして敵陣へ突貫する。

 後ろでは、私を喰おうとしていた鳥型の屍械が私を見失っていた。

 私の機体黒鉄は全身に取り付けられた大きな装甲板により、空流を操り自在に空を駆ける。

 普通、空中機動での姿勢制御は機械任せだ。

 わずかな空気抵抗による機体への負荷を計算し、機体への負担を極力抑え、機体の向きを水平に保つ。

 そんな計算は普通の人間には不可能だ。

 普通の人間………には。

 私は強化人間、兵器を手足のように扱う化け物だ。

 私の拡張された脳は機体を制御する操縦パターンを瞬時に導き出す。

 姿勢制御など、造作もない。

 機体の末端まで神経を伸ばし、その全てを制御する。

 私が細かく指示を出すことで、黒鉄は他の機体では不可能の三次元的な機動を可能とするのだ。

 片側のスラスターだけを吹かし、機体を旋回させる。

 回転しながらトリガーを立て続けに三度引き、弾丸を射出する。

 弾丸は吸い込まれるように敵機へと命中し、爆散した。

 さらに速度を上げ、残りの敵機を墜としに行く。

 味方を撃墜された屍械は私を脅威とみなし、囲むように襲いかかってくる。

 迫り来る無数の捕食触手。

 その全てを紙一重で回避していく。

 前後左右上下、あらゆる推進機構と装甲板を制御し、機体を操る。

 回転しながら空を駆ける。

 もはやどちらが上か、下かも分からない。

 だが、上か下かなど大した問題じゃない。

 必要なのは、敵を倒す、その目的に最適化された軌道。

 敵の攻撃を掻い潜り、そのどてっ腹に鉛玉をぶち込む。

 トリガーを引く。

 その度に屍械の死骸が一つ生産される。

 トリガーを引く、引く、引く、引く、…………


 ……………………………


 …………………


 気づけば、空を飛んでいるのは私と友軍の機体だけだった。

 任務完了。

 友軍の犠牲者はなし………今日も何事もなく済んでよかった、よかった。

 といっても、また怖くて被弾できなかったんだけどね。

 うう………軍を退役する日は遠い…………

 私がしょんぼりしながら帰投しようとした時、友軍との回線が繋がれた。


「おい!テメェ、警告したのになんで突っ込んだ!撃墜されてぇのか!?」


 うわ、またこいつか。

 うるさいなぁ。

 別に撃墜されてもいいのに………とゆうか、撃墜されるのが目的なんだよなぁ………


「撃墜………されてもいい…………」


「はぁ!?」


 あ、やべ。

 思っていたことが口に出てしまった。

 この体不便なことに、喋ろうとしてもうまく回らないくせに、喋ろうと思ってもいなかった考えはぽろっと喋るんだよなぁ。

 言い訳しようとして口をモゴモゴ動かすけど、今度は喋ってくれない。

 もう!なんなのこの体!嫌い!もう死にたい!


「………………死にたい…………」


 ああああああああああ!

 なんでそこだけ口に出ちゃうかなぁ!!?


「おい!それはどうい………


 ブチッ


 回線を強制的に切断した。

 もうこれ以上続けても状況が悪化する未来しか見えなかったからね。

 許せよ、名も知らぬ友軍さん。

 通信がまたかかってきたけど、私はそれを無視して帰投した。





―――――――――――――――――――――――――――――――





「チィッ!なんなんだよ……」


 遠くへ飛んでいく黒い機体を見ながら俺は舌打ちをした。

 さっきから再度回線を繋ごうとしているが、全て拒否されている。


『死にたい』


 先ほど少女が発した言葉が頭をよぎる。


「ようやく、感情を表に出したと思ったら、それかよ!?」


 彼女の口から発せられた破滅願望、それを否定して欲しかった。

 否定したかった。


 ………………




 俺たちの仲間である少女、月宮來羽は良い意味でも悪い意味でも有名な人間だ。

 上からの命令で、いきなり軍部へと配属された年端もいかぬ少女。

 その、端正な容姿も相まって彼女はとても目立った。

 素性もわからぬその子供のために、専用機まで用意されたのだから目立つなというのが無理というものだ。

 専用機が用意されたという事は少なくとも、将官レベルの戦力があるはずだ。

 だが、その小さな少女にそれだけの実力があるようにはとても見えなかった。

 彼女を妬むものも大勢いた。

 自分こそが専用機に相応しい、そう思うものたちが彼女へちょっかいをかけるのも当然の流れだった。

 彼らは上官の来ない食堂で、彼女を問い詰めた。

 お前は何者なのかと、なぜあんな高価な機体を与えられているのかと。


「…………さぁ…知らない………乗れって…命令…………」


 それが彼女の答えだった。

 自分より遥かに大きな大人に詰め寄られても、彼女は眉ひとつ動かさなかった。

 まるで人形のように無表情のまま、淡々と質問に答えた。


「命令?命令なら従うのかよ?じゃあ先輩として命令してやるよ、俺の靴を舐めな!」


 明らかな挑発。

 平然とした様子の彼女にイラついたのだろう。

 彼女の感情を逆立てるように下された命令。


「…………命令………」


 だが彼女は表情を変えずに跪いた。


「おい!!」


 その段階で、俺は見ていられず声を上げた。

 俺の他にも、正義感の強いやつらが立ち上がっていた。

 俺たちが止めなければ、彼女は本当に奴等の靴を舐めていただろう。

 感情のないロボット。

 その食堂にいた誰もが、その少女をそんな風に思った。

 俺も、少し薄気味悪く思ったのは事実だ。

 その印象は、彼女が戦場に出ることによってさらに強まった。

 機械のような完全無慈悲な操縦だった。

 とんでもないスペックの新型機、彼女はそれを完璧に乗りこなしていた。

 しかも、驚くべきことに彼女は機械制御を全てオフにしていたのだ。

 駆動騎兵の制御機構の数がどれほど膨大だと思っている?

 その全てをマニュアルで動かすなど、人間業じゃない。

 強化人間。

 誰かが、彼女をそう呼んだ。

 軍の上層部が行なっている非人道的な研究。

 その噂を聞いたことがある人間は多かった。

 だが、それは所詮都市伝説程度のもので、誰も信じてはいなかった。

 月宮來羽が現れるまで。

 彼女の戦闘を目の当たりにして、俺たちは初めて上層部の罪深さを実感した。

 感情もなく、淡々と屍械を狩るその姿は、人間ではなく機械そのものだった。


 その戦闘から、彼女の扱いは大きく変わった。

 何だかわからない、いけ好かない女から、軍部が生み出した殺戮マシーンへと。

 好奇の眼差しが、恐怖の眼差しへと変わった。

 だが、俺のように頭が堅い隊員も何人かはいた。

 小さな女の子が戦場に出ることが許せない頭のお堅い人間が。

 ところが、彼女はそんな俺たちを拒むかのように人前に姿を表すのをやめた。

 毎日用意された自室へと篭り、出てくるのは出撃時だけ。

 出撃すれば、その人外じみた操縦技術で屍械を蹂躙した。

 機械的な生活。

 人前に姿を現さない事で、より彼女の神秘性は増し、人間扱いするやつは減っていった。

 俺は彼女の無機質な目が嫌いだった。

 何か、人間らしいところを見せて欲しかった。


 そんな彼女が、最近になって妙な行動を見せ始めた。

 友軍を振り切っての無茶な突撃。

 正確無比な彼女らしくない、合理性を欠いた行動だ。

 彼女が初めて見せた、ロボットらしくない行動。

 そこにわずかな人間らしさを感じて、俺は彼女に真意を問い詰めてみることにした。

 その答えが『死にたい』。

 巫山戯るな。

 つらいなら、そうと言え。

 戦いたくないなら、そう声に出せ。

 周りに助けを求めてくれ、お前はまだ子供なんだぞ。

 勝手に死のうとするな。

 頼むから少しは、子供らしいところを見せてくれ。


 『死にたい』という彼女が発した小さな救難信号。

 その願いを叶える事はできない。

 彼女を生きて、この地獄から解放する、俺はそう決意した…………





―――――――――――――――――――――――――――――――





月宮來羽

対屍械用強化人間、強化実験の唯一の成功体。

動かない表情筋と回らない口にいつも苦労している。

食堂で問い詰められた時はマジでビビっていたし、ちゃんと怖がっていた。

命乞いも込みで靴を舐めようとしていたのだが、もちろん表情筋は微動だにしなかった。

最近の悩みは自殺願望があると勘違いされていること。

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