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核実験と地震

作者: 板堂研究所

 2017年9月3日、北朝鮮の核実験は規模の大きさ(M6.1。水爆実験と主張)から新たなフェーズへの転換が感じられた。米国から控えるよう、強く働きかけていたにも拘わらず実施したものであり、唯でさえ国際的な非難を免れない上、そのほぼ直後に起きた地震について、地下核実験が誘発したとして責任を追及されても不自然ではなかろう。


 1.米国の強い警告の背景には、米国自身の今までの核実験の経験を踏まえ、この様な地球物理学的な配慮が含まれていた可能性があり、例えば日本が地震国である事も勘案されていよう。


(1)地下核実験の行われた9月3日のほぼ直後、近隣の中国の国境地域の延吉や日本の秋田県、また9月24日、北朝鮮北東部の核実験場の近くで地震が発生した。

(なお北朝鮮の核実験との関連性は憶測の域を出ないが、9月7日、環太平洋の特定地域でM8.2の大きな地震が発生し、90名以上の死者が出た。例え全くの偶然だとしても、北朝鮮に対する厳しい見方があり得るだろう)


(2)2016年に北朝鮮は、1月と9月に地下核実験を行い、9月9日の5回目の実験はM5.3と観測された。その直後の9月12日、韓国で珍しく大きな地震(M5.8)が発生し、そのため北朝鮮に対する脅威認識や危機感が大幅に高まったものと見られる。日本でも大方予想されなかった沖縄(9月末)や鳥取(10月)で地震が起きた。


(3)2006年10月に北朝鮮は初めて地下核実験を行い、M4.9規模と観測されたが、翌11月にM8.2の千島列島沖地震が発生した。また2007年1月には千島列島沖地震(M8.1)が発生し、ソウルでも地震が起きた。


 2.大きな地震は、地理的な遠隔地にまで余波が及び、察知可能である事が古くから知られており、地下核実験でもその原理は同じはずである。


(1)関東大震災(M7.9)は、1923年9月1日に起きたが、当時、豪州のシドニーに出張中だった大森房吉(東大の地震学教授)は、現地の最新鋭の地震計を見学中だった。針が大きく揺れたのを見て、日本で大地震が起きたに違いないと直感した由。


(2)2011年3月11日に東日本大震災の起きた当日、ノルウェーのフィヨルド(アウランド・フラム)で1.5~2メートルの波が観測された。フィヨルドでこの様な現象が起きる事は古くから知られており、1755年のリスボン大地震や1950年の(チベットで起きた)アッサム大地震の際にも観測されている。


(3)2013年5月24日のオホーツク海地震(M8.3)の際、その余波は東京、南京やモスクワに到達し、モスクワでは、めったに起きない地震に住民が驚き、900人が家から避難した。


 3.2011年3月11日の東北大震災は、原発危機まで誘発してしまった。爾後、原発の安全性は、活断層の有無と関係する地盤の安定性、地震の起きる蓋然性と深く関係する事が認識され、公に論じられる様になった。

 もし地下核実験が、地震発生の蓋然性が高くない地点でも、不自然な地震を誘発させる可能性のある場合には(大げさな言い方をすれば)韓国や日本の原発の安全性・信頼性を根本から揺るがしかねない。原発の操業・運営に当たり、付近の活断層に加え、北朝鮮による地下核実験の可能性まで勘案せざるを得なくなるだろう。


 4.今後、北朝鮮が核実験を行い、その直後に、例えば米国の西海岸で大きな地震が起こり、多数の犠牲者が出た場合、あるいは強い放射能により、航行中の船舶で米国民に犠牲者が出た場合、それが全く偶然だったとしても、米国はこれを北朝鮮による先制攻撃とみなし、復讐を大義名分とし、報復攻撃する可能性があろう。(犠牲者が、同盟国の韓国や日本の国民の場合も、米国民に準じて対応するだろう)

 この場合には中国も因果関係を斟酌し、米国の「報復攻撃」を受ける北朝鮮に対して軍事支援を控える可能性があろう。従ってリスクが高過ぎるので北朝鮮は、これ以上、核実験すべきでない、との結論が出るだろう。


 5.1963年に発効した部分的核実験禁止条約に基づき、放射性物質による汚染を防ぐため、核実験は大気圏内外や水中で禁止され、地下核実験のみが許される事となった。しかし地下核実験について、地震を誘発し得るとの認識が一般化すれば、包括的核実験禁止条約発効の機運を高めるきっかけとなろう。

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