176 裁縫美女三人からみた箱庭やリディアの事
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――裁縫美女三人組side――
あら、研修生ね、いらっしゃい。
あなた達を歓迎するわ。
今からこの箱庭の仕事について説明するから、シッカリお聞きなさいな。
そう言うと、元スラムの子たちで裁縫師の子らは、少し怯えた様子で仕事の研修生としてやってきたわ。
あらら、そんなにプルプルと震えて。
アタシたちが美人過ぎるかしら?
そうかも知れないわね? ふふふ。
「さて、まずはこの裁縫師小屋の説明をするわ。あなた達は裁縫師でしょう? シッカリついてきなさい」
「「「「はい!」」」」
そう言うと、壁にズラリと並んだあらゆる糸に、布地を見せてアタシたちは説明を始めたわ。
「ここに並んでいる糸、左から【ひんやり糸】と言って、触ったりするとひんやりする糸よ。これはリディアちゃんが作ってくれる素晴らしい糸の一つ」
「夏場はこの【ひんやり糸】や【ひんやり布】が欠かせなくなるの」
「冒険者や庶民にも大人気の一品よ、でも糸はとても貴重なの。ロストテクノロジーを使い慣れているリディアちゃんにしか作れない糸だから注意してね」
そう言いながら、【ひんやり布】の説明、次に【ほっかり糸】の説明、最後に【ほっかり布】の説明をすると、これらのアイテムは全てリディアちゃんが、毎朝チェックが来て追加分を貰っていることを告げると、子供達は驚いた様子だったわ。
あら? なんですって? リディア姉はそんなに忙しいのかって?
そうね、ジッとしている暇は一切無いんじゃないかしら?
もし箱庭で倒れる人が居たとしたら、真っ先にリディアちゃんが倒れる位には忙しい筈よ。
そう――リディアちゃんは常に他の小屋にも回って必要な物を作り、自分で作らねばならないアイテムも大量に作っているわ。
その量の多さは、私たちが作るアイテムの数倍、いいえ、数十倍ともいえるわね。
そうよ? リディアちゃんはとってもとっても忙しい子なの。
「次にこっちのボードを見て頂戴。依頼品が書かれているけれど、赤い文字が納期の日が決まっている物よ。青は、纏めて作れたら渡して欲しいって言う依頼ね」
「黒はいつでも納品して大丈夫な依頼よ」
「では、皆さんは赤依頼を中心に作っているってことですか?」
一人の子が手を挙げて質問すると、私たちは「そうよ~?」と答え、お婆ちゃんたちは「そうじゃねぇ」と笑いながら言ってくれたわ。
「リディアちゃんは発明の神様なの。アタシたちですら考えられなかったような物を次々に考えるわ。それが下で作業をするアタシたちに降りてくるけれど、赤依頼さえ終わらせてしまっておけば、基本的に後は自由なのよ」
「赤依頼さえ終わってしまえばね」
「でも、無理のない範囲での個数しか依頼はしてこないわ」
「だって、リディアちゃんも同じように納期が近いものが終わってなかったら、一緒に作ってくれるもの」
「アタシたちだけに任せきりと言う事はしないわ」
「だから納期を過ぎたことは一度も無いのよ」
「仕事を円滑に回すためには、トップが一番動き回っているの。此処で言うとリディアちゃんね。だから、どこの作業小屋でも、納期を過ぎるという事は一度も起きていないわ」
「叱られたりしませんか?」
そう言って質問してくる子供達に笑い飛ばすと、リディアちゃんが私たちを叱り飛ばした事なんて一度もない事を教えたわ。
何時も「お手伝いに参りましたわ」って言いながら、隣で凄い速さでアイテムを作っていくのよ? アタシたちの裁縫スキルレベルは50を超えているけれど、リディアちゃんはもっともっと高いのだと思うわ。
それに、仕事をする際の服装だってとっても自由で良いの。
ほら、アタシたちって見た目が男でしょう?
それでもリディアちゃんは女性として扱ってくれるし、新しいワンピースを着ていると「素敵ですわ!」って褒めてくれるから遣り甲斐があるのよ。
「それに、リディアちゃんは服の見た目に関しても依頼してくる事があるのよ?」
「本当、何時寝ているのか心配になるくらいに」
「あの子、子供向けの絵は下手だけど、服のデザインの絵は上手なのよね」
そう言って、既に幾つもの案を描いたスケッチブックを子供たちに見せると、目を輝かせて「「「わぁ!」」」と言っていたわ。
これらは全て、リディアちゃんが出した洋服の案よ。
子供向けから大人向け、動きやすく作業がしやすい、それでいて丈夫な服をリディアちゃんは提案してくるわ。
時期に合わせて涼しい服装に、季節に合わせた服のデザインは目を見張るものがあるわね。
「アタシたちも負けない様に精進しないと、リディアちゃんばかりがデザインしてしまうわ。それでは裁縫師の名折れよ」
「だから、アタシたちもデザインは色々考えて作ったりしているの」
「ダメ出しを貰う事も偶にはあるけれど、それは一つの勉強だと思っているわ」
「それに見て頂戴。この足ふみミシンにマネキンたちを」
「この二つのお陰で、今までにない程、デザインもしやすくなって、服を縫う速さも以前とは比べ物にならないの」
「こういったアイテムを、無償で与えてくれるのもリディアちゃんよ」
「ね? 私たちは赤い納期は急がないといけないけれど、他はとっても自由なの」
「スキルの低いあなた達はまずは糸を作れるようになるところからスタートだけれど、最初はへたくそでも良いのよ。アタシたちだってへたくそだったわ」
「糸の元である素材をドレだけ無駄にしたか分からないわね」
「でも、リディアちゃんは怒ったりしないわ」
「『とても頑張ってくださっているんですね!』って、反対に応援してくれるの」
「アタシたちも貴方たちも、とってもラッキーよ? そんな上司の許で仕事が出来るのだから、幸せだと思うわ」
「それに、リディアちゃんから仕事の合間に貴方たちを導くように言われているの。分からない事、コツを教わりたい時はいつでも言いなさい。教えてあげるわ」
「あなた達がある程度スキルが上がったら、一緒にリディアちゃんのウエディングドレスを作りましょうよ」
「それが私たち裁縫師に出来る、最高のプレゼントになるわ!」
前の職場では、溝攫いしていたアタシたちを、こんな素晴らしい箱庭に連れて来てくれて。
最低賃金以下で働かされていたのに、お給金もすごく良くて。
仕事場の環境さえ整えてくれて、衣食住を保証してくれる上司なんて、早々居ないわ。
今から前の仕事に戻れるかって言われたら、絶対無理ね。
箱庭から出たくないからお金は溜まる一方なのが大変だけれど、それくらいよね?
「アタシたちも最低な仕事からのスタートだったの」
「あなた達元スラムの子らと変わらない生活だったのよ?」
「あなた達も変われるわ。だってリディアちゃんと箱庭の神様に守られているんだから」
「そうよ? 箱庭にいる間は、みんなリディアちゃんと箱庭の神様に守られながら仕事をしたり、スキルを上げていくの」
「でも、アタシたちは外に出て仕事を探そうとも思わないわ」
「だって、此処ほど過ごしやすくて、美味しいご飯が出るところを知らないもの」
「あっても行かないけれど」
そう言って笑い合うと、子供達もホッとした様子で椅子に座り、私たちが渡した白い糸にする為の材料とクリスタルを渡して、糸作りからスタートさせたわ。
「さぁ、あなた達もこれから花開くのよ!」
「箱庭の裁縫師として!」
「アタシたち美女についてきなさい!」
「「「「はい! お姉様!!」」」」」
ああん、素晴らしい一声!
アタシたちをお姉様なんて! 良く解っているわ!!
なんて教え甲斐のある子供たちなのかしら!!
これもそれも、リディアちゃんとカイルちゃんのお陰ね!
さぁ、道のりは険しいけれど、スキル上げを頑張って頂戴ね?
大丈夫、ここでは失敗は成功の基。
誰も叱ったりなんてしないわ。
ここで必要なのは、やる気だけ。
「「「私たち裁縫師は、あなた達裁縫師の卵ちゃんを歓迎するわ!!」」」
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美女三人、書くのが物凄く楽しいですw
昔働いていた場所の近くに、そっち系のお店が結構ありまして
店に入ってきては女子トークをした事がありますw
そのノリを思い出しながら書かせてもらいました。
男の世界も大変だけど、女の世界はもっと怖いと思ったものです。
ふふふ。




