170 薬局協会への怒りの後は、孤児たちに癒される。
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翌朝、カイルと共に商店街へ向かうと、急ぎ薬局の中の棚を配置しましたわ。
多く棚を作ってしまった感はありますけれど、多かったら退かせばいい事ですし問題ないですわね!
最後に託児所のポスターを店内に貼り準備も万端ですわ!
「明日からの薬局オープン楽しみですわね!」
「ああ、これから先に祖父の元へ行って薬局は明日からのオープンだと伝えてこようと思う。薬師協会やダンノージュ侯爵領の薬局に人を配置するらしい。まぁ、監視員だな」
「監視させられるような真似をした方が悪いんですわ! 薬も命も平等であるべきですのに」
「そうだな」
わたくしの言葉にカイルは強く頷き、わたくし達も箱庭経由で戻ろうとしたその時でしたわ。
「薬局を商店街に作るなど罷りならん!!」
「そうだ! 薬師協会に入っていない薬局など認められんぞ!!」
聞こえてきた声にカイルとわたくしは外を見ましたわ。
お互いに頷き外に出ると、ライトさんらしき金髪の周りにお年寄りたちが屯っていますわね。
「どうかなさいましたの? ライトさん」
「あ、リディア姉さんに兄さん」
「どうかなさいましたか? 商店街であのように騒ぎ立てられては困りますね」
「お前さんがカイルか」
「ええ」
「薬師協会にも入っていない薬局など認められんぞ」
「そうじゃそうじゃ!」
「薬局を開くなら前もって薬師協会に入り、上納金を貰わねば開店など不可能!」
「ああ、その事でしたか。安心為さってください。ダンノージュ侯爵家より、この商店街の薬局は特例措置を頂いております」
「「「特例措置?」」」
「ええ、今まで薬局に無かったアイテム等を取りそろえる為、まずは特例措置として薬局を開いて良いとの事です。今日中には薬師協会と各店舗の薬局に、ダンノージュ侯爵家から通達がありますので、ここにいる時間があるのなら薬局で待っていた方が宜しいかと」
カイルがそう言うとお爺様方は苦虫を噛むような表情でこちらを睨んでますわね。
良いですわ、良いですわよ? 闘争心が燃え上がりましてよ!!
「しかし、薬師協会を無視するなど、ダンノージュ侯爵家の跡取りとして、恥ずかしくはないのかね?」
「では、効果の薄い薬を出して金儲けをする自分たちは恥ずかしくないと仰るんですね?」
「それは言いがかりじゃ!」
「では、競争しましょう」
「「「競争だと?」」」
「ええ、そちらの薬局がまともな薬を出していれば、俺の出す薬局でも人はばらけ入る事でしょうし、もし不正……などしているのであれば、薬師協会もタダではすまないでしょうし」
「そうですわね、ちゃんと民に優しい値段で、効果のある薬をだし、まともに運営しているのであれば……と言う当たり前の事が前提ですけれど、お話を色々聞くと、薬局は随分と……ねぇ?」
「そうだなぁ……」
「うちの薬師たちはシッカリとした商品を作っている! スキルだって高い!」
「では、うちの見習い薬師のスキルレベルが現在30ですけれど、それ以上に高いと言うことですわね?」
「「「「30!?」」」」
「ええ、見習いで30スキルですわ」
「嘘をつくな!! でたらめじゃ!!」
「あら、毎日薬を作っていれば、見習いでもそれ位のレベルには上がりますわよね? まさか、長い事薬師をしているそちらは、もっと低いなんて事言いませんわよね? ええ、言わないでしょうとも! もっとレベルは高いのでしょう? そう言えば皆さんはどれ程の薬師スキルなのかお聞きしたいわ!」
「ええい! 話にならん! 帰るぞ!!」
「ご参考までにお聞きしたいんですけれどダメでしょうか」
「黙れ小娘が!!」
そう捨て台詞を吐いて老人達は逃げるように走っていきましたわ。
ふむふむ、なるほどなるほど。
「カイル、スキルボードをもう一つ作りますから、お貸ししますので薬師たちのスキルがどれくらいかもチェックするよう、アラーシュ様にお伝えくださいませ。薬局はスキルレベル30からが確か店を持つ基準ですわよね」
「ああ、あの様子だと30はないだろうな」
「協会に携わる薬師はスキル50からですものね。不正があっては大変ですわ!」
「ああ、リディアの言う通りだな! 徹底的に調べることにしよう!」
「兄さんもリディア姉さんも悪人顔ですよ」
「あら、うふふ」
こうしてわたくしはカイルにスキルボードを手渡し、後で返して貰う事を前提にアラーシュ様に話をして薬師協会全員のスキルチェックを行う事も伝えて貰うべく行って貰い、わたくしも箱庭に戻るとロストテクノロジーでもう一つのスキルボードを作ると鞄に入れ、沢山のお年寄りや子供達がいる池を通り過ぎ、先に薬師たちが居る作業小屋に向かいましたの。
そこで、先程あった出来事を伝えるとドミノさんは顔を真っ赤にして怒り、他の皆さんも怒っているようでしたわ。
「皆さんは、薬師スキルは幾つになりましたの?」
「俺達は全員42です」
「ボクは見習いなので32です」
「僕は40になったばかりです」
「うん、定められている既定スキルは既にありますわ。皆さんでしたら大丈夫ですわね」
「だが、ダンノージュ侯爵領の薬師たちは、多分……高くて20くらいだと思う」
「ああ、俺もコッソリ聞いたが、協会の奴らで25らしい」
「協会が定めているスキルを大幅に下回りますわね……。今回カイルにスキルボードを渡しているんですけれど、協会及び全ての薬師たちのスキルをチェックすることになってますの。これがダンノージュ侯爵家のアラーシュ様に伝わると、どうなりますかしらね?」
そう言ってニッコリ笑うと、ドミノさんは「なるほど」と口にし、他の皆さんも悪い笑みを浮かべていますわ。
唯一天使なのはラキュアス君くらいかしら?
「つまり、不正ですね?」
「その通りよ、ラキュアスくん」
「不正をしているのに人の命を見ることも出来ないレベルのスキル。殺人と同じだと思います」
「ええ、わたくしも人災だとアラーシュ様にはお伝えしましたわ」
「では、徹底的に膿を吐き出さねばならないと言うことですね?」
「ええ、その通りですわ。ラキュアスくんも賢いですわね」
「どうでしょう? でも、人の命を預かる立場がその方々に無いのは確実ですので」
「子供のラキュアスでもわかる事だ。俺達も今から行って薬局の中を整えるぞ」
「「「「おう!!」」」」
そう言うと、全員が一斉に動き出し、各自アイテムボックスを手にすると池鏡の間まで走って行かれましたわ。
この分だと明日からのオープンは上手くいきそうですわね。
それに、薬師協会の息が掛かった人たちも一斉に潰せそうで楽しいですわ。
「寄生虫は消すに限りますわね」
物理になりますけれど、仕方ありませんわよね?
ふふふ。
その後、元スラムの子たちが待っていると言う休憩所まで向かうと、丁度子供達がオヤツタイムの時間でしたわ。
男の子たちは片手におにぎり、片手にお茶を持って一心不乱に食べている姿を見ると、育ち盛りなのねと微笑ましく思いますの。
「皆さんお待たせしましたわ!」
「あ、リディア姉ちゃん!」
「お帰り――!!」
「オヤツを食べ終わった子たちから手を洗って、スキルボードで調べますわよ~! スキルを見るのは3歳からですので、食べ終わった子たちから来てくださいませ~」
「「「「は――い!!」」」」」
うん! あんな胸糞悪い事があったあとに天使たちを見ると浄化されそうですわ!
気持ちもスッキリしたところで、気持ちよくスキルチェックが出来そうで、わたくし大満足でしてよ!
「そうそうリディアお姉ちゃん。僕たち今日は朝から初めて勉強したんだよ!」
「まぁ凄い! 一体どんなことを勉強しましたの?」
「もじをかくところからー!」
「ぼく、じぶんのなまえかけたよー!」
「素晴らしいわ!! まずは自分の名前を書けるようになるなんて! 天才ですわ!」
「「「「やった―――!!」」」」
「わたし、まだなまえかけなかった……」
「ぼくも……」
「てんさいになれない……」
「あら、覚えるのが遅いと言う事は、後でド――ンと賢くなる証拠ですわ! コツコツ努力する事は、大人でも難しい事ですのよ? 皆さんは、コツコツ今日は頑張ったのでしょう?」
「「「「うん」」」」」
「でしたら、大人でも大変な事を出来たと言う事です! 素晴らしいですわ!!」
「ぼくたちもすごい?」
「ええ、とってもとっても凄いですわ!!」
そうやって幼い子供達の報告を聞いていると、最初にスキルチェックに来たのはロックでしたわ。
流石リーダー、誰よりも早くですわね!
「俺も手に職をつけて、何時かはカイル兄やリディア姉の役に立ちたい! スキルをチェックして欲しい!」
「分かりましたわ! でもまず手を洗ってらっしゃいませ!」
「いけね……」
そう言って皆に笑われる中、ロックは手を洗い戻ってきましたの。
さぁ、元スラム孤児たちのスキルや如何に!?
++++++++++++++++++
喧嘩売ったな? よろしい、戦争だ。
とスイッチ入った二人とやり合える人はきっと余りいない。
それでも人はイライラすると癒されたくもなるもので。
気持ちの切り替えって大事ですよね。
私は夫からク〇発言があったら即パンチが炸裂するタイプです。
裏拳が痛いとよく言われます(/・ω・)/
無論、じゃれ合い程度ですけどねw
でも、子供に癒されるは、あるあるです。
他所の子も笑顔で走り回ってると可愛い(*'ω'*)
元孤児たちはそんな感じに近いかも知れません。




