表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
9/20

第九話 大人数を描き切れるか不安なのか?

初めての感想に浮き足立つも、結の言葉に自分の書きたいものに立ち戻った永太。

いよいよ新キャラのデビューに取り掛かるが……?


どうぞお楽しみください。

「げはははは! 包囲は完成した! 後は包んで押し潰すだけだ!」

 悪霊のおさの勝ち誇った笑いに、いつきは動揺した様子もなく隣にいる相棒に声をかける。

「だそうだけど、どうするりん?」

「問題ない。俺が全て斬り伏せる。樹はそらを守れ」

 刀に手をかけた凛を、悪霊の長は指差して笑う。

「その凶刀きょうとうをそう何度も振るえるものか! 霊力を喰らうが故に我らには甚大な攻撃力を誇るが、同時に持ち手の霊力も喰らう! 三度も振れば立てもすまい!」

「……どうかな」

 瞬間、澄んだ鍔の音が響き、悪霊の包囲の一角に穴が空く。続けて二回、三回。

「ひいぃ……」「な、なんだこれぇ……」

 動きは見えないのに音の度に味方が減る状況に、悪霊達は恐慌をきたす。

「馬鹿者! あんな小細工、あの刀を使いこなせていない証ではないか! 距離を取ってじわじわと削れ!」

「そうなると僕の出番だね。『斉射フルオート』」

 樹の両袖から、気を込めたウッドビーズが飛び出す。

「ぎゃあ!」「ぐわぁ!」「ひぎぃ!」

 崩れた戦列に更なる攻撃を受け、浮き足立つ悪霊達。

「引くな! あれほどの攻撃、そうは続けられん! 死角から攻めて」

 長の言葉は鋭い風切り音で消えた。遥か彼方から放たれた矢が、長の核を貫いたからだ。

「はぎ……、ば、ばか、な……」

「長がやられた!」「逃げろ! 逃げろ!」

 悪霊達が散ったのを確認して、樹は携帯を取り出す。

「もしもしほむらさん? 一発命中、お見事でした」

「当たり前でしょ。あんな小隊長レベルの長なんて、目を瞑ってたって当たるわよ。それにしても何で最初からたせなかったの?」

「戦意が高い時に大将を討つと、残党が弔い合戦に動く場合があるんですよ。だから戦力と戦意を削って、大将でギリギリ保っている状態で討つのが最善なんです」

「そ。まぁ良いわ。早く空様を安全な所にお連れしなさい」

「了解しました」

 電話を切った樹は、

「焔さんはあのつっけんどんな言い方がないと良いのにな」

 そう呟いてやれやれと息を吐いた。




 よし、焔デビュー完了!

 最初はキツいキャラで、段々とデレさせていけば、そのギャップでキャラが立つだろう!

 他に問題もなさそうだし、投稿……。

 ……いや待て。念には念を入れよう。

 また何か矛盾があったらリカバリーが大変だ。

 頼り切り感はあるけど、やっぱり遠藤えんどうに読んでもらってからにしよう。

 女性キャラ追加で昨日もらった感想が消えるかもっていうのもあるし、急ぐ事ないよな……。




「ふむ。焔は遠距離担当で行くのだな。設定では拳で戦うインファイターと迷っていたようだが」

「元々は樹が遠距離担当のつもりだったんだけど、樹は凛と組ませて中距離支援の方が上手く回りそうな気がしてな」

「成程。そうすると焔は凛や樹とは離れての活動が主になるのか」

「ピンチに遠距離狙撃で逆転とか、逆に狙撃地点がバレたピンチを凛や樹が助けるのもありかなって思ってる」

「うん、それならきっと良い流れになるだろう」


 おお! これまでにない手応え!

 俺の腕も順調に上がってるな!


「ただ一つ気になったんだが、今回空は全然喋っていないな」

「えっ、あ……!」


 しまった確かに!

 焔の出番に気を取られすぎた!


「空の描写も少ないし、凛がドライな感じで、折角前の話で繋がった関係性も伝わってこない」

「た、確かに……!」


 ぐうの音も出ない……。

 何が腕が上がってる、だよ!


「場にいる登場人物が多いと、描写しきれない部分も出てくるだろう。この場に空、凛、樹、悪霊の長、悪霊の群れ、そして焔とがいるわけだから、なかなかに大変だ」

「う、うん……」


 遠藤に言われて、これまでにない人数が話に出ている事に気がついた。

 どうしよう、この先(いわお)すいを出したら、六人プラス敵ってなるよな……。

 さばけるのか? 俺に……。


「大人数を描き切れるか不安なのか?」

「あ、う、うん……」

「大丈夫。山梨やまなし君はあれだけ丁寧に一人一人の設定を作り上げられたんだ。気付きさえすれば全員を大事にした話が書けるはずだ」

「あ、あぁ!」


 そうだ!

 俺が作り出した世界で、俺が生み出した人達なんだ!

 俺がびびってどうする!


「一度に大人数を捌く手法もあるしな」

「そ、それは!?」

「リレー方式と……、いや、これは口を出しすぎかな」


 全然そんな事ないから!

 むしろ更新が止まらないために絶対必要だよ!


「話の内容に直接口出すんじゃないんだろ!? 大丈夫だって! 頼む! 教えて!」

「ふむ、山梨君がそう言うなら」


 遠藤は図書カウンターに備え付けの手近なメモに、丸と三角を組み合わせただけの人をいくつか描いた。


「一つはリレー方式。一つの話題を複数の登場人物で回す方法だ」

「リレー?」


 遠藤は絵の人の上に、鉛筆をとんとんと動かしていく。


「今回の話なら、悪霊の長が包囲したという話題を、樹が受け流して凛に振っただろう? そこに空が怯えた様子だったり、二人を信頼する様子で会話に加えるんだ」

「成程!」

「悪霊達が長の言葉に呼応してからにすれば、更にリレーは広がって臨場感も増す」

「おぉ……!」


 それならちょっと加筆するだけで、空にも出番を作れる!


「もう一つは会話の起点と終点を一つに収束する書き方だ。一人称の話だとよくある書き方だな」

「? それってどんな感じだ?」


 すると遠藤は、人の上に新たな人を描き、各人と線で繋いだ。


「バラエティ番組の司会者を思い浮かべてみてほしい。話題を振って、反応を見て、感想を述べる。そして別の人に振る。こうすると誰の言葉なのか混乱しにくい」

「う、うーん?」


 何かいまいちピンとこないな……。


「まぁ山梨君のスタイルなら、リレー方式が良いと思うよ。ただ、毎回全員に回すと冗長になるから、必要な人だけ回して、次の話題では別の人を加えるなどすると良い」

「……改めて遠藤ってすごいのな……」

「色々読むから共通点に気付いただけだよ。私からすれば、自分の話を書ける山梨君の方が凄いと感じる」

「そ、そうか……?」


 まだまだ駆け出しで、失敗や教わる事ばかりな俺だけど、遠藤と話してると次の話を書きたくなるから不思議だ。


「よし、空を絡めた形で改訂してみる」

「あぁ、楽しみにしている」


 この先どんな展開を描けるのか、不安はあるけどわくわくの方が少し大きい感じがした。

読了ありがとうございます。


大勢の登場人物を過不足なく描くのは難しいですね。

気を抜くと誰かしら「あれ? いたっけ君?」ってなるので……。

そんな中で試行錯誤の末に辿り着いたのが、リレー方式と、固定点とのやり取りでした。

……誰かもっとスマートに書ける方法がありましたら、教えてください。


あ、永太にですよ! 永太に!


このお願いはフィクションです。

実際の作者の苦手意識、要望、ヘルプミーとは関係ありません。


これでよし。


次話もよろしくお願いいたします。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] いや~。今回も勉強になりました! 自分の場合、キャラの喋り方を一人ひとり変えて、大人数で喋るときも、誰の会話かわかるようにしているくらいですが。 あとですね。 『ワ〇ピース』とかって、新し…
[一言] はじめまして。 私が書いているバトル系も、まだ、なろうには出してないのですけれども……下書きですごい量の人数が出てます。 味方6人ぐらい。 そして、それぞれの戦いもあるので……。 そういうと…
[良い点] あ〜、これは人によりますよね。私は脳内補完しながら読むのが好きなので、過不足ない描写は冗長に感じてしまって読み飛ばすんですよね(笑)そんなこといちいち書かなくても良いよって。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ