第七話 簡単にボツだなんて言わないでほしい
結の感想から、新たなエピソードを追加する事にした永太。
しかし思ったよりエピソード作りは難航して……。
どうぞお楽しみください。
やばい……。
あれこれ考えてたら、何が正解なのかわからなくなってきた……。
凛と空のエピソードを足すべきか、それとも空の『全の気』の特性を先に書くべきか……。
何なら新たに一話足して……、いや、それだと霊力の矛盾をそのままに一話空く事になる。
一気に二話投稿? でもそんなのした事ないし、慌てて修正してるのがバレバレな気が……。
あああ! 考えれば考えるほど何しても失敗な気がしてくる!
と、とにかく書いてみよう。
書けば何か見える、はずだ……!
「……で、書いてみたけれど結局決められず、私の元に、という訳か」
「……すまん……」
「謝る事はない。『身喰いの刃』の続きを希望したのは私だ。君の作品を歪めない範囲での協力は惜しまないよ」
「助かる……」
……情けないよな。
まるで遠藤に依存して書いてるみたいだ……。
まぁ更新するようになってから閲覧はちょこちょこ増えてはいるが、相変わらず感想はおろか、評価も付かない。
遠藤の感想が唯一の支えなのは間違いないけど……。
「ふむ、空の持つ『全の気』を、悪霊側の視点から描くのは工夫があって良いね」
「そ、そうか!」
「悪霊側にも組織がある事もわかるし、何故空が狙われるかも明確になった。凛への影響は若干分かりにくいけれど、今後の布石にはなったと思う」
う、下手に凝りすぎたか……。
「それとこちらの凛と空のエピソード、唐突な日常回という感は否めないが、凛の心境の変化のきっかけとしては悪くない。生きる意味を取り戻すには少し弱いが」
こちらも結構手厳しい……。
でも総合すると、『全の気』の説明を投稿した方が良さそうだな。
日常回も嫌いじゃないんだけど……。
「ありがとな。助かった」
「役に立てたなら良かった。それで以前読ませてもらった「鍔鳴』の話と合わせて三話、今日一気に投稿するのか? それとも三日に分けるのか?」
「え? い、いや、日常回の方はボツにしようかと……」
「何?」
わ!
いつもは半開きのような遠藤の目が、かっと見開いた!
「何故だ」
「え、いや、『全の気』の話か日常回か、どっちかにしようと思っていたから……」
「何故」
「え、その、『鍔鳴』の説明まで間が開かない方がいいかなって……」
「ならば今日一気に投稿してしまえば良い。折角そこまで書いたものをボツにするなんて……!」
……変な感じだ。
怒られてるのに、責められてるのに、どこか嬉しい……。
あ、遠藤が普通の顔に戻った。
「……済まない。感情的になった。山梨君の作品に口を出さないと言っておきながら……」
「い、いや、俺の方こそ、読んでもらったのにボツだなんて言って悪かった……」
「……話の都合で後に回すとか、他の話で生かすとかなら文句もないが、ここまで書いたものを簡単にボツだなんて言わないでほしい……」
「わ、悪い……」
こんなに俺の作品に気持ちを向けてくれるなんて……!
そんなに『身喰いの刃』は遠藤にとって面白いのか……?
それとも、も、もしかして俺の事を……?
「エピソードを気軽に削られると、完結がいつになるか分からないからな」
「そ、そうか……」
何期待してんだ俺は!
初めっから遠藤はそう言ってたじゃないか!
「……そしたら、『全の気』の説明入れて、『鍔鳴』の話、その後に日常回を入れるわ……」
「うん、良いと思う」
「……じゃあ家帰って投稿する……」
「あぁ。楽しみにしている」
持ち上げて落とされたような気分……。
いや、俺が勝手に盛り上がっただけだけど……。
とにかく書き続けよう!
作品のためにも、遠藤のためにも、俺自身のためにも……!
読了ありがとうございます。
女子にちょっと親切にされると『自分の事好きなんちゃう!?』と思う、男子高校生特有の勘違い炸裂。
……いや、高校生に限らないかな……。
キャバクラやガールズバーがなくならない事からも確定的に明らか。
はっ、……これは、涙……? 泣いているの、私……?
この作品は後書きも含めてフィクションです。
実際のあれやこれやとは関係ありません。
これでよし。
次話もよろしくお願いいたします。