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第十六話 私はその道を応援しよう

成長を感じたり失敗を噛み締めたりしながら、話を書き進める永太。

順調な中、つい口が滑る事もあるようで……。


どうぞお楽しみください。

 その一閃は、まるで墨のようだった。深淵の名に相応しい『うつろ』から放たれたその闇は、軌跡の上にいた悪霊を全て呑み込んだ。りんが『虚』を鞘に収めると闇は閉じ、悪霊の群れは影さえ残らなかった。

『どうだい? 万の悪霊を一振りで、というのも誇張じゃないだろ?』

「確かにな」

 小人のような姿で肩に乗る稀刃まれはの言葉に、凛は頷く。

『しかし俺様の指導があったとはいえ、こんなにあっさりと『虚』のぎょし方を身に付けるとはな』

「まだだ。そらを人身御供にするよりも有益であると証明しなくては」

『随分とあの巫女にご執心だな。そんなに大事なら、二人で封じられたらどうだ? 封印の風穴は、時も経たない特殊な場所だと聞く。永遠に共に生きるというのも』

「できない」

 怒りもためらいもなく、稀刃の言葉を切り捨てる。

『何故だ? 俺様が刀の中で聞いていた限り、悪い関係じゃなさそうだったが』

「俺にとって空は特別だが、空は皆に優しい。俺だけが特別ではない。それだけの事だ」

『しかし』

「行くぞ」

 稀刃の言葉を遮る凛。そこには揺るがない強い意志があった……。




「どうだ!? 『虚』の活躍シーンは完璧だろ?」

「ふむ、見せ場としては悪くない」


 遠藤えんどうの反応も上々だ。

 いやー、我ながら格好良いシーンが書けたな。

「これで人気出たら、本になったりして」


「何だ。山梨やまなし君には書籍化願望があったのか」

「えっ!? な、何でそれを!?」

「何でも何も、今山梨君が口にしていたが」

「うそっ!? 俺声に出てた!?」


 やばい! 恥ずかしい!


「急に顔を覆ってどうした?」

「……いや、何か恥ずかしい……」

「書籍化する事も、それを目指す事も、何に恥じる事もないと思うが」

「いや、何というか、頭の中で思ってはいるけど、口に出すのは身の程知らずな感じが……」

「確かに今の山梨君の腕では、出版社は鼻にもかけてくれないだろうな」


 うん知ってる!

 知ってるからわざわざ言葉にしないで!


「だが採掘された宝石が、そのままで宝飾店に並ぶ事はない。研磨され、カットされ、人が手に取りたくなる装飾を施されて店に並ぶ」

「……!」

「もし山梨君が自分の作品を宝石だと信じられるのなら、持ち込みなりコンテストなり品評の場に出すと良い」

「え、いや、それは……」


 宝石と言われて一瞬嬉しくなった気持ちがすぐ冷えた。

 選ばれなかったら、酷評されたら、それは自分の作品を、努力を否定される事……。

 懸命に書いたものが否定されたら、俺は……。


「品評されるのが怖いのか?」

「……あぁ……」

「しかし書籍化は、作品に色々な人の意思が介在するという事だ。表現を変えさせられたり、エピソードを削られたりする事もある。品評を恐れていては前に進めないぞ?」

「……そう、だな……」


 ……甘く考えていた。

 ネット小説って人気が出れば、そのまま本になるものだと思っていた。

 そうだよな、そのために編集って人がいるんだもんな……。

 自分の持ち込んだ宝石が砕かれる光景が浮かび、身震いがした。


「だがもし山梨君が本気で目指すなら、私はその道を応援しよう。もっとも、読んで感想を言う程度の応援だけどね」

「え、遠、藤……!」

「山梨君の作品は、飛び抜けて面白い訳でも、深い感動がある訳でもないけれど、何というか味がある」

「……褒めてるのか、それは……?」


 でもこれからも読んでくれるってだけでも心強い!

 この先しんどい事があっても書き続けていける気がする……!

 ……持ち込みとかコンテストとかは……、まぁ、何か、手応えがあるのが書けたら……。

読了ありがとうございます。


フィーックション! フィーックション!

最近冷えるなフィーックション!


これでよし。


物語を良くするためのアドバイスは、時として耳に痛いものですが、それをより美しい物語になるための研磨だと思えば耐えられるでしょう。多分。知らんけど。


次話もよろしくお願いいたします。

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― 新着の感想 ―
[良い点] (ΦωΦ)フフフ…作者の本音が垣間見えるようで面白いのですヽ(=´▽`=)ノえ?フィクション?
[良い点] 遠藤さんが山梨くんをいつものように時に手厳しく、時に暖かく応援してくれていて良いですね。 読みかけの作品が完結してくれないと嫌だ、からスタートしたのが味があると言ってくれているので、山梨…
[一言] 味というのは出てくるのですね。 コンピューターが考えた文章はその人自身の性格や書き方、思想が組み込まれなく、味がない。 下手だとしても、みんな味が出ています。 味を大切にしたいなーと考えさせ…
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